EU、2027年11月までにロシア産ガス輸入を完全禁止で合意
(EU、ロシア)
ブリュッセル発
2025年12月05日
EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は12月3日、ロシア産ガスのEU域内への輸入を完全に禁止する規則案で政治合意したと発表した(プレスリリース
)。今回の合意により、ロシア産ガスの域内輸入は、2027年11月から完全に禁止される。EUは、ロシア産エネルギーからの脱却計画「リパワーEU」(2025年5月9日記事参照)を掲げ、既にロシア産ガスの輸入を大幅に削減しているが、規則案によりロシア産ガスの輸入を恒久的に停止することになる。
今回の合意は、欧州委員会の提案(2025年6月20日記事参照)におおむね沿ったものだが、輸入禁止の開始時期は一部前倒しされている。まず、パイプライン経由および液化天然ガス(LNG)を含むロシア産ガスの輸入は、規則案の施行から6週間後に禁止される。ただし、欧州委案が提案された2025年6月17日より前に締結された契約については、次の移行期間が設けられている。
短期契約の場合、LNGは2026年4月25日から、パイプライン経由は2026年6月17日から輸入が禁止される。長期契約の場合、LNGは対ロシア制裁第19弾パッケージ(2025年10月29日記事参照)の禁輸対象になっていることから、それに合わせるかたちで1年前倒しし、2027年1月1日から輸入が禁止される。パイプライン経由に関しても、3カ月前倒しし、2027年10月1日から輸入が禁止される。ただし、エネルギー需要が拡大する冬季に向けガス備蓄が遅れている加盟国については、例外的に2027年10月31日までパイプライン経由での輸入が認められる。
EUにガスを輸入する場合、一部例外を除き原産国にかかわらず、事前承認が必要となる。移行期間中に既存の契約に基づきロシア産ガスを輸入する場合は少なくとも1カ月前に、ロシア産以外のガスを輸入する場合も5~7日前に所定の情報を当局に提出しなければならない。また、今回の合意では、規則案の規定に違反した事業者に対する罰則も新たに追加された。
欧州委、2027年末までにロシア産石油の輸入を禁止する法案を提出へ
今回の合意には、欧州議会が求めたロシア産石油の輸入禁止に関する規定は盛り込まれなかったが、欧州委が2026年初頭にロシア産石油輸入を段階的に廃止する法案を発表する旨が加えられた。ロシア産石油は既に制裁の対象となっているが(2022年6月6日記事参照、2025年7月22日記事参照)、現在認められている輸入についても2027年末までに全て禁止する方針だとしている。
(吉沼啓介)
(EU、ロシア)
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