EU、対ロシア制裁第18弾を採択、ロシア産原油の上限価格引き下げ
(EU、ロシア、ウクライナ)
ブリュッセル発
2025年07月22日
EU理事会(閣僚理事会)は7月18日、第18弾となる対ロシア制裁パッケージを採択した(プレスリリース)。ロシアの戦費調達能力を削減すべく、特にエネルギー、金融、軍事産業を狙った。スロバキアの賛同が得られず(2025年7月1日記事参照)、合意に時間を要したが、欧州委員会のカヤ・カッラスEU外務・安全保障政策上級代表は、これまでの中で最も強力な制裁パッケージの1つであり、EUはウクライナへの支援を引き下げることはないという明確なメッセージを発信することができたと強調した。
中心となるのは、エネルギー分野では、ロシア産原油に対する上限価格を現行の1バレル当たり60ドル(2022年12月6日記事参照)から市況を反映し、47.6ドルに引き下げる。同時に、今後、自動的に市況を反映し、常に上限価格が効果的となるよう新たな措置を導入する。過去6カ月間のウラル原油価格の平均市場価格より15%低くなることを保証する仕組み。事業者には予見可能性を与え、ロシアに対しては、依然として政府収入の3分の1を占める石油輸出からの収益削減を狙う。上限価格規制の回避に利用される「影の船団」(2024年12月18日記事参照)に属する船舶は制裁対象として新たに105隻を追加し、合計444隻となった。
また、カナダ、ノルウェー、スイス、英国および米国を除く第三国で生産されたロシア産石油製品の輸入を禁止。ロシア産石油の輸入禁止を免除していたチェコに対しては、当該免除措置を終了するとした。このほか、ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム1、2」に関しては、商品やサービスを含む完全な取引禁止措置を課し、EU事業者はノルドストリームに関するいかなる取引もできないこととなった。
金融分野では主に、既に対象としてあげられているロシアの銀行23行に加え、新たに追加した22行を含めた45の銀行を、国際銀行間通信協会(SWIFT)システムから完全に排除し、これら銀行との取引を全面禁止する。このほか、ロシア直接投資基金(RDIF)との取引禁止に加え、RDIFの投資先との取引を禁止するとし、4つの投資先が挙げられた。また、銀行および金融セクター向けのソフトウエアの販売、供給、移転、輸出を新たに禁止した。
このほか、ロシアの軍事産業または制裁の迂回を支援しているとして、輸出制限の対象には新たに26の企業(ロシア企業15社、トルコ企業4社、中国・香港企業7社)を指定。EU域内の資産凍結、資産提供の禁止、入域禁止対象には新たに14人、41団体を指定し、初めて「影の船団」の船長も含まれた。
(薮中愛子)
(EU、ロシア、ウクライナ)
ビジネス短信 53629943c703b023