欧州委、2028年1月からのロシア産ガス完全輸入禁止に向けた規則案発表

(EU、ロシア)

ブリュッセル発

2025年06月20日

欧州委員会は6月17日、EU域内へのロシア産天然ガスの輸入を2028年1月以降、完全に禁止する規則案を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。規則案は、欧州委が5月に発表したロシア産エネルギーからの脱却計画「リパワーEU」の行程表(2025年5月9日記事参照)に基づくものだ。今後、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会で審議される。

規則案は、パイプライン経由、あるいは液化天然ガス(LNG)として、ロシアから直接、あるいは第三国を経由して、域内に供給される天然ガスの輸入を2026年1月1日から原則禁止する。ただし、エネルギー安定供給の観点から、輸入禁止は段階的に実施する必要があるとして、移行期間を設定している。6月16日以前に締結された契約のうち、契約期間が1年以下の短期契約に基づく供給については2026年6月16日まで、1年を超える長期契約に基づく供給については2027年12月31日まで、例外措置として輸入を認める。LNG輸入の多角化により時間を要する内陸の加盟国については、短期契約の場合でも、パイプライン経由の輸入を2027年12月31日まで認める。駆け込み需要による輸入増加を防ぐべく、6月16日以前に締結された契約でも、供給量を増大させるなど既存の契約を修正した場合、新規契約とみなし、2026年1月からの禁止措置の対象とする。

また、禁止措置の実効性を担保すべく、天然ガスを域内に輸入する事業者に対し、輸入する天然ガスがロシア産でないこと、あるいは例外措置の適用条件を満たすことを示す情報を関税当局に提供することを義務づける。提供が求められる情報には、ガス供給契約の締結日、契約期間、供給量、契約先の身元、ガスの産出事業者と産出国、LNGの場合は最初の積み込み港などが含まれる。

さらに、ロシア企業、あるいはロシア企業が支配する事業者に対する域内のLNGターミナルでの長期サービス提供についても、2026年1月1日以降禁止する。ただし、6月16日以前に締結された契約に基づく場合、2027年12月31日まではサービスの提供を認める。

このほか、EU加盟国に対し、ロシア産天然ガスの輸入状況や、代替に向けた措置、行程表、代替供給元などを含む「国家多角化計画」を2026年3月までに策定することを求める。規則案にはロシア産石油の輸入を直接制限する規定はないが、ロシア産石油の輸入を継続する加盟国に対しては、2028年1月までのロシア産石油の輸入停止に向けた措置を国家多角化計画に含めることも求める。

(吉沼啓介)

(EU、ロシア)

ビジネス短信 7cb3381e4da2fcfb