ドイツ政府、EV充電網拡充へ5分野41施策の新戦略を閣議決定
(ドイツ)
ベルリン発
2025年12月03日
ドイツ連邦政府は11月19日、電気自動車(EV)の普及に向けた戦略「充電インフラ・マスタープラン2030
」を閣議決定した(プレスリリース
)。2019年の初版、2022年のマスタープランII(2022年11月1日記事参照)に続くもので、充電インフラのより迅速かつ容易な拡充を目指す省庁横断的な総合戦略となる。充電条件を改善、需要に応じた全国的な充電ネットワークの構築を目指す。
戦略は5分野・41施策で構成される。
(1)需要と投資の強化
EVの自動車税免税を2035年まで延長(2025年10月27日記事参照)。送電網使用料引き下げ(2025年12月3日記事参照)による充電価格引き下げ。集合住宅・商用車用車庫の充電設備補助。高速道路沿いの高出力充電規格(MCS)対応の充電ポイント整備。
(2)実施の簡素化・加速
許認可や報告義務の簡素化。入札や手続きのテンプレート化などを通じた自治体への充電インフラ設置・運用支援。
(3)競争強化・価格透明性の向上
事前契約などをせず都度課金されるアドホック充電価格をリアルタイムで取得可能に。契約ベースの充電価格の透明性向上。公共空間の充電設備設置に携わる事業者を競争的かつ非差別的に選定。
(4)電力網統合の改善
充電事業者の接続手続きのデジタル化・標準化。容量情報の公開や、系統事業者からの回答期限導入により、充電インフラ事業者の計画性を高める。またEVのバッテリーが電力を電力網に戻す双方向充電(VtoG)導入を支援、変動性の高い再生可能電力の系統統合を促す。
(5)利便性・イノベーションの促進
充電設備を一定時間以上占有している場合に課せられるブロッキング料金の夜間適用の抑制。バリアフリー対応。予約機能。電気トラックのバッテリー交換や自動充電の実証を進める。
ドイツで現在利用可能な充電インフラは、EUの代替燃料インフラ規則(AFIR)(2023年8月2日記事参照)が定める最低目標を約200%上回っているが、確実で質の高い充電環境もEV普及の鍵となる。パトリック・シュニーダー連邦交通相は「電気自動車(の普及)を成功させ充電を給油と同じくらい当然のことにする」と強調した。
ドイツ自動車産業連合会(VDA)は同プランについて、EVの市場拡大に貢献する一連の措置を適切に規定しているとコメント。特に充電価格の透明性の向上、充電施設整備加速のための簡素で迅速な認可手続き、集合住宅向けの充電インフラの支援策を評価。一方、成長著しい小型電気商用車が十分に考慮されていないと指摘した。
(中山裕貴)
(ドイツ)
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