欧州委、レアアースなどの重要原材料の確保に向けた行動計画「リソースEU」を発表
(EU)
ブリュッセル発
2025年12月15日
欧州委員会は12月3日、重要原材料(CRM)の安定供給に向けた行動計画「リソースEU」を発表した(プレスリリース
)。行動計画は、経済安全保障強化に向けた政策文書(2025年12月12日記事参照)の一環として、一次および二次CRMの域内生産の拡大と、サプライチェーンの強靭(きょうじん)化や多角化を目指すものだ。レアアースなどの輸出規制(2025年10月14日記事参照)を強化する中国を念頭に、当面はレアアース磁石、バッテリー原材料、防衛関連原材料のバリューチェーン強化を主な支援対象とする。
まず欧州委は、日本のエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を参考に、「欧州重要原材料センター」を設置する。同センターは、CRMバリューチェーンに対するインテリジェンス機能を開発し、EUや加盟国による投資、備蓄、共同購入に向け指揮を執る。欧州委は2026年に同センターの運用を開始した上で、同年第2四半期(4~6月)に同センターの権限強化に向けた法案を提案する。
また、欧州委は、2025年7月に設置した、共同購入用の買い手と売り手のマッチメイキング制度「EUエネルギー・原材料プラットフォーム」(2024年6月6日記事参照)を活用し、2026年3月にレアアースなどを対象に第1回CRMマッチメイキングを実施する。2026年初頭には、加盟国間のCRM備蓄を調整する制度も運用を開始する予定だ。
CRMの域内生産能力の拡大には、CRMのリサイクルが欠かせない。そこで、欧州委は今回、重要原材料法(2023年11月17日記事参照)の改正案を提案した。これは、CRMのリサイクルを促進すべく、永久磁石の含有表示義務の対象製品を拡大するほか、ポストコンシューマー(消費者から出た)廃棄物に加え、プレコンシューマ―(消費者に届く前の)廃棄物に由来するリサイクル済み永久磁石の含有量の申告を義務付けるものだ。また、欧州委は2026年第2四半期をめどに、永久磁石のスクラップと廃棄物の輸出制限やアルミニウムのスクラップを対象にした限定的な規制も提案する予定だ。
さらに、欧州委は、重要原料法に基づく戦略的事業(2025年3月27日記事参照)への支援を加速させるべく、複数のEUプログラムを調整する「CRM資金調達ハブ」を設置。短期的に代替供給可能な事業を対象に、今後12カ月で30億ユーロを拠出する方針だ。これにより、2029年までに単一国への依存度を最大50%引き下げることを目指す。
このほか、欧州委は既に南アフリカ共和国をはじめとした資源国との連携策を締結しており、引き続き供給元の多角化に向けて価値を共有する域外国との関係強化を進める。
(吉沼啓介)
(EU)
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