10月の米小売売上高は前月比横ばいで予想に届かず、自動車販売の減少響く

(米国)

ニューヨーク発

2025年12月18日

米国商務省の速報PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(12月16日付)によると、2025年10月の小売売上高(季節調整値)は前月比で横ばいの7,326億ドル(添付資料表参照)となり、ブルームバーグの市場予想(0.1%増)を下回った。なお、9月は0.2%増(速報値、2025年11月26日記事参照)から0.1%増に下方修正された。同統計は、連邦政府閉鎖の影響(2025年11月14日記事参照)で当初予定されていた11月14日から発表が遅延していた。

無店舗小売り、家具などが押し上げ要因に

業種別にみると、無店舗小売りは、前月比1.8%増の1,311億ドル(寄与度はプラス0.32ポイント)で、最大の押し上げ要因だった。また、家具(2.3%増)、スポーツ・娯楽品・書籍(1.9%増)、家電(0.7%増)など裁量品分野への支出はいずれも増加し、年末商戦を前に消費者の前倒し購入傾向が進んだ可能性がある。ただし、家具や家電などは比較的輸入依存度が高く、一部価格上昇が影響しており数量は増加していない可能性があることに留意が必要だ。一方で、自動車・同部品は1.6%減と2カ月連続で減少し、電気自動車(EV)に対する連邦税制優遇措置が9月末に失効したこと(2025年7月15日記事参照)が一因となったとみられる。そのほか、ガソリン価格の低下が、ガソリンスタンドにおける下押し圧力となった。また、小売り統計で唯一のサービス項目のフードサービスは前月の0.2%増から0.4%減となり、5カ月ぶりのマイナスに転じた。

近年、年末商戦の前倒しが進んでおり、10月から本格化する流れが定着している。小売り各社は大型セールやプロモーションで幕を開けており、消費者の間では魅力的な販売セールでお買い得感を求める動きが顕著に表れている。景気の先行きに不透明感が漂うものの、ホリデー商戦は底堅く推移しており、全米小売業協会(NRF)は小売売上高が前年同期比で3.7~4.2%増加すると見込んでいる(2025年11月11日記事参照)。ただし、富裕層が消費を牽引している一方で、低所得層は家計の圧迫により慎重な姿勢を崩しておらず、所得層による消費傾向の格差が浮き彫りになっている。

消費者マインドは前月より悪化しており、民間調査会社コンファレンスボードが11月25日に発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした11月の消費者信頼感指数は88.7(10月:95.5)に低下し、7カ月ぶりの低水準となった。内訳では、現在の雇用環境や経済状況を示す現況指数が126.9(10月:131.2)に低下し、6カ月先の景況見通しを示す期待指数は63.2(10月:71.8)と大幅に落ち込み、10カ月連続で景気後退の指標とされる80を下回った(添付資料図参照)。

同社チーフエコノミストのダナ・ピーターソン氏は、「消費者の回答で経済に影響を与える要因として挙げられたのは、引き続き、物価とインフレ、関税と貿易、政治情勢が中心だった。連邦政府閉鎖への言及も増加した。労働市場への言及はやや減少したものの、依然として他の頻繁なテーマの中で際立っていた。全体として、11月の回答の論調は10月よりもやや悲観的だった」と述べた。

(樫葉さくら)

(米国)

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