EU、CSDDD・CSRDの適用対象や義務内容の大幅簡素化で合意

(EU)

ブリュッセル発

2025年12月16日

EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は12月9日、企業持続可能性デューディリジェンス指令(CSDDD、2025年3月7日記事参照、注1)と、企業持続可能性報告指令(CSRD、2025年3月7日記事参照、注2)の簡素化法案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で政治合意した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。法案は、CSDDDの対象企業数を現行指令から約7割削減、CSRDについては約8割削減するほか、対象企業だけでなく、対象ではないものの対象企業から情報提供を求められる企業(対象外企業)の対応負担を軽減するものだ。法案は今後、両機関による正式な承認を経て施行される見込み。

CSDDDについては、適用対象基準を、EU企業の場合、全世界純売上高15億ユーロ超かつ従業員数5,000人超に引き上げる。域外企業に関しては、全世界純売上高15億ユーロ超に引き上げる(従業数基準は設けていない)。

デューディリジェンスの実施義務については、自社、子会社、活動の連鎖上にあるビジネスパートナーの事業活動全体を対象とした包括的なリスクマッピングから、合理的に利用可能な情報に基づく一般的なスコーピングへと簡素化する。これにより、対象外企業が提供を求められる情報は減少することが見込まれる。また対象企業も、負の影響が最も発生しやすくかつ最も深刻になる可能性が高い分野に注力することができ、こうした分野が複数ある場合に、直接的なビジネスパートナーが関わる分野を優先し評価することも認められる。

このほか、気候変動に関するパリ協定に沿った移行計画の策定義務やEUレベルでの民事責任に関する規定を削除するほか、CSDDDに基づき制定された国内法を違反した場合の制裁金の上限を全世界売上高の3%以下へと引き下げる。適用開始時期についても、EU企業・域外企業ともに2029年7月26日からとする。

CSRDについては、適用対象基準を、EU企業の場合、純売上高4億5,000万ユーロ超かつ従業員数1,000人超へと引き上げる。域外企業に関しては、EU域内売上高4億5,000万ユーロ超かつEU子会社・支店の純売上高2億ユーロ超へと引き上げる。また、既に適用が開始されている企業は、今回の改正により対象外となる場合、2025年度分から報告義務が免除される。

このほか、欧州持続可能性報告基準(ESRS)も簡素化の方針で合意した。欧州委員会は今後、これを踏まえ、ESRSに関する委任規則の改正案を策定する。また、対象企業が、従業員数1,000人未満の企業に情報提供を求める場合、要求できる内容を中小企業向けの任意の報告基準に沿った内容に限定する。なお、適用開始時期は既に延期されている(2025年4月7日記事参照)。

(注1)CSDDDの詳細は、ジェトロの調査レポート「EU人権・環境デューディリジェンス法制化の最新概要」(2025年5月)を参照。

(注2)CSRDの詳細は、ジェトロの調査レポート「CSRD適用対象日系企業のためのESRS適用実務ガイダンス」(2024年5月)を参照。

(吉沼啓介)

(EU)

ビジネス短信 1873de464ec37cfb