トランプ米政権、10月末の米韓首脳会談に関する共同ファクトシート発表

(米国、韓国)

調査部米州課

2025年11月18日

米国のトランプ政権は11月13日、10月末に行われた米韓首脳会談に関する共同ファクトシート(Joint Fact Sheet)を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

ドナルド・トランプ米大統領と韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は10月29日、韓国で首脳会談を開催した。同日には先端技術協力に関する覚書と双方向の投資に関するファクトシートが発表されていたものの(2025年10月30日記事参照)、それらには、米国の追加関税や韓国の対米投資などに関する合意内容は含まれていなかった(注1)。

米国側が今回発表したファクトシートには、韓国大統領室が発表した共同ファクトシートに含まれる、(1)重要産業の再建と拡大、(2)外国為替市場の安定、(3)商業的連携の強化、(4)相互貿易の促進、(5)経済繁栄の保護、(6)米韓同盟の現代化、(7)朝鮮半島や地域問題に関する協力の7項目(2025年11月18日記事参照)に加え、(8)海洋・原子力分野のパートナーシップ深化が含まれている(注2)。

これらのうち、米国の追加関税や韓国の対米投資など通商面にかかる主な内容は次のとおり。

〇相互関税率の修正、一部対象外品目の設定

  • 相互関税率を、MFN税率(米韓自由貿易協定を適用する場合はその税率)、または15%のうち、より高い税率へと修正する。
  • ジェネリック医薬品や米国で入手不可能な特定の天然資源などが掲載された「連携パートナー向け潜在的関税調整(Potential Tariff Adjustments for Aligned Partners)」リスト上の品目や、航空機・同部品に対する追加関税を撤廃する。

〇1962年通商拡大法232条に基づいて課される追加関税率の修正

  • 自動車・同部品(注3)、木材・製材とその派生品に対して課されている追加関税率をMFN税率(米韓自由貿易協定を適用する場合はその税率)、または15%のうち、より高い税率へと修正する。
  • 追加関税など輸入制限措置の発動に先立つ232条に基づく調査が行われている医薬品については、15%を超えない範囲で追加関税を課す。
  • 半導体および製造装置については、韓国と同等以上の貿易量を持つ他国の製品に適用される税率を超えない範囲で、韓国の製品への関税率を設定する。

〇対米投資の促進

  • 造船セクターに対する1,500億ドルの対米投資と、米韓で締結される戦略的投資に関する覚書(MOU、注4)に基づく2,000億ドルの対米投資を行う。なお、韓国は毎年200億ドルを超える金額を負担することは求められない。

〇その他通商面の合意事項

  • 米国で製造され、米国で安全が認証された乗用車について、これまで設定していた年間5万台までの輸入制限措置を撤廃し、追加試験なしで受け入れる。また、国内での排ガス認証プロセスに際し、米国認証当局に提出された書類以外の追加書類を要求しない。

安全保障・防衛面での協力などにも合意

米国側の共同ファクトシートでは、「海洋・原子力分野のパートナーシップの深化」が項目として取り上げられている。海洋分野では、米国に対する韓国による造船産業の近代化と製造能力拡大への貢献に向け、ワークショップを通じたさらなる協力が約束された。原子力分野では、韓国の民間・海軍原子力プログラムへの支援に向け、米国が民生用ウラン濃縮や使用済み核燃料の再処理プロセスを支援するとともに、原子力潜水艦の建造を承認し、緊密な連携をすることが発表された。

(注1)トランプ大統領は7月30日にSNSへの投稿を通じて、韓国との通商合意成立を発表していたものの、合意に関する文書などは米国政府から発表されていなかった(2025年8月1日記事参照)。

(注2)なお、米国通商代表部(USTR)は共同ファクトシート発表の同じ日、ジェミソン・グリア代表による声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表している。

(注3)中・大型トラック・同部品は追加関税率修正の対象外。

(注4)戦略的投資に関する覚書については、本記事執筆時点で韓国側から締結に関する発表があったものの(2025年11月18日記事参照)、米国側からは発表されていない。

(滝本慎一郎)

(米国、韓国)

ビジネス短信 8b4ed810d8e3ddbc