韓米の関税・安保ジョイント・ファクトシートを発表、交渉は最終妥結
(韓国、米国)
ソウル発
2025年11月18日
韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は11月14日(韓国時間)、米国のドナルド・トランプ大統領との間で、韓米両国の関税と安全保障分野の交渉結果を盛り込んだ共同説明資料(ジョイント・ファクトシート)が確定したことを発表した。韓米両国による合意文書が発表されたことを踏まえ、李大統領は「わが国の経済と安保における最大の変数の1つだった韓米貿易・通商交渉、安保協議が最終的に妥結した」と総括した(注1)。
韓国大統領室が公表したジョイント・ファクトシートによると、(1)重要産業の再建と拡大、(2)外国為替市場の安定、(3)商業的連携の強化、(4)相互貿易の促進、(5)経済的繁栄の保護、(6)韓米同盟の現代化、(7)朝鮮半島や地域問題に関する協力の7項目が記載された。それぞれの主な内容については、次のとおり説明している。
(1)重要産業の再建と拡大
- 両首脳は造船、エネルギー、半導体、医薬品、重要鉱物、人工知能(AI)・量子コンピューティングなどを含む多様な分野で韓国の投資を歓迎する。これには、米国の承認に基づく韓国からの1,500億ドル規模の造船分野の投資や、両国代表が署名する「戦略的投資に関する了解覚書(MOU)締結」(2025年11月18日記事参照)に伴う韓国の2,000億ドルの投資を含む。
- 米国は相互関税の適用で、韓国産商品に対して韓米の自由貿易協定(FTA)や米国の最恵国(MFN)関税率のうち適用可能な税率、または15%のうち、より高い税率を適用する。また、韓国産自動車・同部品、原木·製材木と木材製品に対する関税を15%に引き下げる(注2)。今後、関税の賦課を予定している医薬品は15%を上限に課税することにし、半導体(装置を含む)も、韓国が他国(韓国以上の輸出規模を持つ国)より不利な条件を付与しないこととする。
- ジェネリック医薬品(原料・前駆体を含む)、米国内で生産されない天然資源などの戦略品目、航空機・同部品については、相互関税を免除する。なお、航空機・同部品は、鉄鋼・アルミニウム・銅派生品への品目別関税からも免除する。
(2)外国為替市場の安定
- 両国はMOU上の合意が市場不安を引き起こしてはならないということを相互に理解し、年間200億ドルを超える金額の調達を韓国は要求されないという点を確認した。
(3)商業的連携の強化
- 両首脳は、韓国企業による1,500億ドル規模の対米直接投資(トランプ大統領任期中に実行の予定)の発表を歓迎し、両国は同投資の円滑な執行に最善を尽くす。
- 両首脳は、大韓航空のボーイング航空機103台、360億ドル規模の購入発表を歓迎した。
- 両国は「Buy America in Seoul」イニシアチブ(注3)を歓迎する。
(4)相互貿易の促進
- 韓国と米国は非関税障壁について議論し、相互貿易促進のための合意と履行計画を明文化し、2025年内に韓米FTA共同委員会で採択することとする。
- 例えば、米国産自動車で連邦自動車安全基準(FMVSS)適合車両の輸入上限5万台の制限を撤廃することや、デジタルサービス関連の不要な規制に直面しないよう保証することなどを含む。
(5)経済的繁栄の保護
- 両国首脳は両国の競争力維持と安全なサプライチェーン確保のために、経済および国家安全保障協力を強化する必要があることを認識した。
(6)韓米同盟の現代化
- 米国は持続的な在韓米軍駐留による対韓国防衛合意を強調した。
- 李大統領は、可能な限り早期に韓国の法的要件に適合するよう、国防費支出をGDPの3.5%に増額するという韓国の計画を共有し、トランプ大統領はこれを歓迎した。また、2030年までに米国製軍事装備の購入に250億ドルを支出することとし、韓国の法的要件に合致するよう、在韓米軍のための330億ドル相当の包括的支援を提供する計画を共有した。
(7)朝鮮半島や地域問題に関する協力
- 両首脳は北朝鮮の完全な非核化と朝鮮半島の平和と安定に対する意志を再確認し、2018年の米朝シンガポール首脳会談共同声明を履行するために協力することを約束した。
- 両首脳は日本との3者協力を強化していくことにした。また、両首脳は台湾海峡での平和と安定維持の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促し、一方的現状変更に反対した。
(注1)7月31日の交渉結果の公表(2025年8月5日記事参照)から3カ月半後、10月29日に慶州市で行われた韓米首脳会談(2025年11月4日記事参照)から16日後の合意文書発表となった。
(注2)韓米FTA、米国の最恵国(MFN)関税率のうち、適用可能な税率が15%以上の韓国産商品に対しては品目別関税を追加で課さず、15%未満の韓国産商品に対しては韓米FTA、または米国の最恵国(MFN)関税と追加される品目別関税の合計が15%になるようにする。
(注3)同イニシアチブは、韓国が米国の州政府と協力し、中小企業を含む米国企業が参加する年次展示会をソウルで開催し、米国産商品の韓国への輸出を促進する。
(橋爪直輝)
(韓国、米国)
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