韓米戦略的投資に関する覚書に署名、3,500億ドルの投資方法などで合意
(韓国、米国)
ソウル発
2025年11月18日
韓国産業通商部は、同部の金正官(キム・ジョングァン)長官と、米国商務部のハワード・ラトニック長官が11月14日(韓国時間)に「韓米戦略的投資に関する覚書(MOU)」に署名したと発表した。
このMOUは、先に公表された両国の関税や安全保障に関する共同説明資料(ジョイント・ファクトシート)の内容を踏まえ(2025年11月18日記事参照)、米国に対する韓国の総額3,500億ドルの戦略的投資に関する運用方針について記載したものだ。主な記載内容は次のとおり。
【投資2,000億ドル関連】
- 投資事業の選定:米国大統領が米国投資委員会(委員長:商務部長官)の推薦を受けて選定。ただし、投資委員会は事前に韓国の協議委員会(委員長:産業通商部長官)と協議し、商業的に合理的な投資(注1)のみを米国大統領に推薦(注2)。
- 投資分野:両国の経済と国家安全保障上の利益を促進する分野で、造船、エネルギー、半導体、医薬品、重要鉱物、人工知能(AI)・量子コンピューティングなど。
- 投資資金:2,000億ドルの投資は、外国為替市場の負担軽減のため、年間200億ドルを上限に、事業の進捗状況に応じた資金要請(キャピタルコール)方式で支出する。外国為替市場の不安などが懸念される場合には、投資の時期や規模の調整を要求することが可能。米国は事業推進に必要な用地の賃貸、用水・電力供給、購入契約の斡旋、規制手続きの加速化に努める。
- プロジェクト管理:米国はプロジェクト管理のための「投資SPV」(SPV:Special Purpose Vehicle、特別目的会社)を設立し、個別プロジェクトごとにも「プロジェクトSPV」を設立。投資SPVは複数のプロジェクトSPVを管理する「傘」型SPVの性格を持ち、仮にあるプロジェクトで損失が発生しても、他の成功プロジェクトを通じて収益の補填が可能。
- 投資収益の分配:元利金返済までは韓国と米国にそれぞれ5対5の比率で分配され、元利金返済以降は韓国と米国にそれぞれ1対9の比率で分配。ただし、一定期間(20年)内に全額の元利金返済が困難と見込まれる場合、収益分配比率の調整も可能とした。
- 特記事項:米国はプロジェクトに商品・サービスを提供する業者を選定する際に、韓国企業を優先し、韓国が推薦する韓国人マネジャーを選定しなければならない。また、投資履行過程で紛争や対立が発生した場合、協議委員会などを通じて最大限友好的に解決する。
【造船協力投資1,500億ドル】
- 米国投資委員会が承認した事業について、韓国政府は直接または協議委員会を通じて、造船分野の民間投資、保証、船舶金融などを支援する。これは「2,000億ドル投資」のような収益分配方式は適用せず、発生する全ての収益が韓国企業に帰属する。
- 造船協力投資についても、米国は用地の賃貸、用水・電力供給、購買契約斡旋、規制手続きの加速化に努めることとした。
政府は特別法を整備し、対米投資を専門に扱う特別基金を設立する計画だ。その基金のために外貨を調達するが、外国為替市場への影響を最小化すべく、外国為替市場で直接調達する方式よりも、外貨資産の運用収益を活用したり、外貨建て債券を発行したりするなど、他の手段を優先的に行う計画だ。特別法には特別基金の設置、投資資金の調達、運用方式、ガバナンスなどに関する内容を盛り込む予定で、準備などを迅速に進めている。
今回のMOU署名に際し、産業通商部は「最終的には、韓国の国力が許す範囲内で、商業的合理性の原則の下で事業が推進できるよう、相互に利益となる合意に達することができた」とし、「韓国の産業競争力を一層発展させ、韓国企業の米国市場進出拡大の契機となるよう、後続手続きにも万全を期す計画だ」と強調した。
(注1)商業的に合理的な投資とは、投資委員会が信義誠実の原則に基づいて判断した際、投資資金の回収が十分に保証される投資を意味する。
(注2)事業選定は、トランプ大統領の任期が終了する2029年1月まで行う。事業の実施はその後も続くことを想定。
(橋爪直輝)
(韓国、米国)
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