カナダ中銀、政策金利を2.25%に引き下げ、2会合連続

(カナダ、米国)

トロント発

2025年11月04日

カナダ中央銀行は10月29日、政策金利を0.25ポイント引き下げ、2.25%とすることを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(政策金利レート推移参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。経済見通しを示す金融政策報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますも併せて発表した。金利引き下げは前回に続いて2会合連続になる(2025年9月25日記事参照)。

中銀は政策金利引き下げの背景として、経済の低迷とインフレの抑制が続いていることを挙げた。主な要因は次のとおり。

〇米国の貿易政策によるカナダ経済への影響

米国の関税措置や貿易政策の不透明感がカナダ経済に悪影響を及ぼしている。特に自動車、鉄鋼、アルミニウム、木材など、米国の通商政策の標的となった主要産業で、輸出と企業投資が減少し、2025年第2四半期(4~6月)のGDP成長率は前期比年率1.6%のマイナス成長(2025年9月8日記事参照)となった。生産能力の低下やコスト上昇といった構造的なダメージも生じている。

〇経済成長の見通しと労働市場の停滞

2025年後半のGDPは0.75%成長と低水準にとどまる見通しだ。2026年に輸出と投資が持ち直し、2027年には平均1.5%程度まで回復することが予測されている。ただし、2026年末のGDP水準は2025年初の予測より約1.5%下方修正されており、その要因の半分は貿易摩擦による生産能力の低下、残りは需要の弱さによるものとされる。

労働市場も引き続き軟調な状況が続いている。9月の雇用者数は、2カ月連続の大幅な減少の後に増加へと転じたが、貿易に敏感な業種では雇用の減少が続いている。失業率は7.1%で高止まりしており、賃金の伸びも鈍化傾向にある。

〇インフレ動向と要因

経済の弱さが物価上昇を抑える一方、貿易摩擦によるコスト増がインフレ圧力を高めている。これらの相反する要因が相殺し合い、インフレ率は中銀の目標の2%前後で推移することが見込まれる。9月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.4%上昇し(2025年10月24日記事参照)、予想をやや上回った。コアインフレ率は3%前後で安定しているものの、上昇の勢いは鈍化している。

今回の発表と同じ10月29日、モントリオール銀行(BMO)のシニアエコノミスト兼経済部門ディレクターのロバート・カブチッチ氏は、これまでの利下げによって景気を下支えできるとの見方を示しており、「インフレ率は着実に2%へ向かっており、現在の特殊な経済環境では金融政策の効果は限定的と判断されている。このため、今回の利下げでいったん打ち止めとなる可能性が高い」と述べた(BMOエコノファクツ10月29日)。

中銀の次回の政策金利発表は12月10日に予定されている。

(井口まゆ子)

(カナダ、米国)

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