カナダ中銀、政策金利を2.5%に引き下げ
(カナダ)
トロント発
2025年09月25日
カナダ中央銀行は9月17日、政策金利を0.25ポイント引き下げ、2.5%とすることを発表した(政策金利レート推移参照
)。金利の引き下げは、4会合ぶりとなる(2025年8月6日記事参照)。
中銀は政策金利の引き下げを決定した理由として、主に次の3つの要因を挙げた。
(1)カナダの労働市場の軟化
貿易の影響を受けやすい業種での人員削減が目立つほか、その他の分野でも採用意欲の低下を背景に雇用の伸びが鈍化している。失業率は3月以降上昇を続け、8月には7.1%に達した。また、賃金上昇率も引き続き緩やかなペースで推移している。
(2)インフレに対する上昇圧力の減少
コアインフレの指標は依然として3%前後で推移しているものの、月次ベースでは年初に見られた上昇の勢いが弱まっている。代替的な指標や消費者物価指数(CPI)構成項目の価格変動の分布など、広範な指標を踏まえると、基調的なインフレ率はおよそ2.5%程度で推移しており、インフレ圧力は緩和傾向にある。
(3)報復関税の撤廃による将来のインフレリスクの低下
カナダ政府が、トランプ関税措置に対する報復関税の多くを撤廃したことにより、輸入品の価格上昇リスクが後退(2025年8月27日記事参照)。これにより、将来的なインフレ圧力の一因とされていた貿易関連コストの上昇懸念が緩和される見込み。ただし、足元で米国の関税に一定の安定が見られるものの、カナダ・米国・メキシコ協定(CUSMA、注)の見直しや地政学的圧力としての関税活用の可能性など、不確実性は依然として高いと強調した。関税の影響は、自動車、鉄鋼、アルミニウムといった主要産業に深刻な影響を及ぼしている。
発表を受けて同日、ロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)傘下のRBCエコノミクスのシニアエコノミスト、クレア・ファン氏は、第3四半期の初期データが改善傾向を示しており、7月には貿易収支が改善したほか、製造業および卸売業の販売も増加した。これにより、GDPが再び四半期ベースで減少する可能性は低いと分析。一方で、雇用の軟化傾向やコアインフレの鈍化が9月に大きく反転しない限り、10月の会合において追加利下げが行われる可能性が高いと予測している(RBCフィーチャードインサイツ9月17日)。
中銀の次回の政策金利と、経済見通しを示す中銀の金融政策報告書の発表は10月29日に予定されている。
(注)米国ではUSMCA、メキシコではT-mecと呼ばれる。
(井口まゆ子)
(カナダ)
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