小売り大手シュバルツ、ドイツ東部に欧州最先端データセンター建設で110億ユーロ投資

(ドイツ)

ベルリン発

2025年11月27日

ディスカウントスーパーマーケットのリドルやハイパーマーケットのカウフランドを展開するドイツ小売り大手シュバルツ・グループは11月17日、総額110億ユーロを投じドイツ東部ブランデンブルク州リュベナウに欧州最先端のデータセンターを建設する計画を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同社史上最大の単独投資で、「欧州のデジタル主権への投資」と位置付けられている。

同社デジタル部門シュバルツ・ディジッツが手掛ける本プロジェクトは、旧火力発電所跡地に建設される。2段階の建設フェーズでモジュール式に拡張可能で、第1期は2027年末までに完成予定。初期の接続容量は約200メガワットで、最大10万枚のGPUを搭載し人工知能(AI)モデルの学習や推論に対応。同月に発表されたドイツテレコムとエヌビディアがミュンヘンで建設中のデータセンター(2025年11月26日記事参照)はGPU約1万枚規模であり、本件は欧州委員会が構想するAI(人工知能)ギガファクトリー群(2025年4月14日記事参照)に匹敵する規模で、既存の国内プロジェクトを大きく上回る。

通常運用時にはグリーン電力のみでの稼働を掲げ、直接液冷方式を採用するほか、2028年以降は廃熱を地域の暖房ネットワークに供給する計画も示された。敷地内には太陽光発電設備を設置し、年間約52万キロワット時の電力を供給する見込み。

ドイツ連邦政府もこの動きを歓迎している。カーステン・ウィルトベルガー連邦デジタル化・国家近代化相は「ドイツがAIのトップリーグで活躍するためには高性能データセンターが不可欠。本プロジェクトはドイツがデジタル主権を推進する能力と専門知識を持つことを示している」と述べた。地元市長のヘルムート・ベンツェル氏は、町の構造変革における新たな章が始まると期待を寄せるが、雇用効果は限定的との見方もある。シュバルツ・ディジッツのロルフ・シューマン共同最高経営責任者(CEO)はメディアの取材に、現場では主に警備員と庭師が必要で「実際の運用は当社の才能ある人材や専門家が活動する場所で行われる」と述べた。

経済紙「ハンデルスブラット」は、シュバルツ・ディジッツが今回の投資により、米国大手のクラウドサービスに代わる選択肢となることを目指している、と報じた(11月17日)。同社は、域外のプロバイダーに依存せず、自立的かつ安全に活動することの重要性を強調している。ドイツ国内の類似プロジェクトとしては、グーグルが本発表の前週に、55億ユーロ規模のデータセンター投資を発表していた(2025年11月27日記事参照)。

(中山裕貴)

(ドイツ)

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