ドイツテレコムと米エヌビディア、欧州最大級のAIデータセンター建設へ
(ドイツ)
ベルリン発
2025年11月26日
ドイツ通信大手ドイツテレコムと米国半導体大手エヌビディアは11月4日、世界初の産業用人工知能(AI)クラウドの構築に向け、欧州最大級となるAIデータセンターをミュンヘンにあるドイツテレコムの既存施設を拡張して建設する計画を発表した(プレスリリース
)。総投資額は約10億ユーロで、2026年初めの稼働を予定している。
本プロジェクトは、民間投資イニシアチブ「メード・フォー・ジャーマニー(Made for Germany)」の最初の旗艦プロジェクトの1つとされる。同イニシアチブは、ドイツをビジネス拠点として強化し、経済と行政のデジタル化を民間主導で加速し、競争力を高めることを目的として、2025年7月に発表された(2025年7月31日記事参照)。
本プロジェクトでは、エヌビディアの最大1万枚のGPUハードウエアとソフトウエア群がドイツテレコムのクラウドネットワーク基盤に統合され、産業用途に特化した複雑なAIモデルの開発・運用が実現される。対象ユーザーは、ドイツおよび欧州の大企業から中小企業、スタートアップ、公共部門まで幅広い企業・組織が想定されている。さらに、ドイツのソフトウエア大手SAPがアプリケーションを提供し、最高水準のデータ保護、セキュリティー、信頼性が保証され、これによりドイツ独自のデジタル基盤でのAI開発が可能となる。
両社によると、すでに複数の企業が利用を予定している。シーメンスのほか、スタートアップからも、ドローン開発のクオンタムシステムズ(Quantum Systems)、AI検索エンジンのパープレキシティ(Perplexity)、ロボティクス関連のアジャイルロボット(Agile Robots)やワンデルボッツ(Wandelbots)、シミュレーション技術のフィジックスエックス(PhysicsX)などが名を連ねる。
エヌビディアのジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)は「ドイツのエンジニアリングと産業の強みは名高いものであり、AIによってさらに強化される。エヌビディアのAIとロボティクスの導入により、ドイツの産業変革の新時代が開かれる」とコメント。ドイツテレコムのティモテウス・ヘットゲスCEOは「機械工学と産業がこの国を強くしてきたが、われわれは課題に直面している。AIは大きなチャンスであり、われわれの製品を改善し、欧州の強みを強化するのに役立つだろう」と述べた。
現地経済紙「ハンデルスブラット」(11月4日付)は、このデータセンターの狙いについて、米国に依存しないAI計算基盤を提供し、ドイツがデジタル主権を確保することにある、と報じている。
(中山裕貴)
(ドイツ)
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