不確実性を超え営業利益を拡大、米国市場重視も継続、ジェトロ「2025年度海外進出日系企業実態調査(北米編)」

(米国、カナダ、日本)

調査部米州課

2025年11月28日

ジェトロは11月27日、北米に進出する日系企業を対象とした現地での活動実態に関するアンケート調査「2025年度 海外進出日系企業実態調査(北米編)」の結果を発表した(注1)。

2025年に黒字を見込む企業は、在米国日系企業で66.5%、在カナダ日系企業で80.5%となった。米国は前年から0.3ポイント増加し、カナダは2000年以来最高の値となった。一方、営業利益見込みの前年からの変化をみると、米国では、関税によるコストの増加や景気の先行きの不透明さなどから、前年より改善したという回答は減少した。その結果、2025年の景況感を示すDI(注2)は2020年以来の低水準となった。営業利益見込みが悪化する理由としては、トランプ関税の影響とみられる調達コストの上昇や米国市場での需要減少のほか、人材を確保する上で課題となっている、人件費の上昇にも回答が集まった。

トランプ関税の影響で米国内調達への関心が高まる

2025年はトランプ政権下での関税措置が立て続けに発表された中(注3)、営業利益に影響を及ぼすトランプ関税として、多くの企業が「対日関税」(73.9%)や「相互関税」(57.2%)を選択した。それらへの具体的影響としては、「調達・輸入コストの増大」や「米国市場でのコスト競争力の低下」が挙がった。一方、対応策としては、回答企業の半数以上が「価格転嫁」を挙げるも、価格交渉が難航しているとの回答も目立った。

また、在米日系企業の原材料・部品の調達先をみると、米国内調達に切り替えるとの回答が前年比2倍超の88件に増加した。特に、日本(45件)や中国(23件)から米国に切り替える予定との回答が目立った。また、中国からASEAN(21件)や日本(17件)に切り替える予定も多くみられた。

生産地についても、米国への移管を検討する件数が2024年の11件から34件に増加するなど、同様の傾向となっている。特に日本からの移管件数は18件と、調達先・生産地の変更に関する調査を開始した2019年度以降で最多だった。

不確実性が増す中でも、約5割の在米日系企業が事業拡大に前向き

関税措置などにより、米国経済の不確実性が増すという在米日系企業の声が多く聞かれる中、今後1~2年で事業を拡大する方向性を持つ在米日系企業は48.3%と、2024年(48.6%)とほぼ同水準だった。拡大理由として、現地市場ニーズの拡大が挙がり、具体的には半導体やデータセンターといった産業・領域での拡大に期待する声が聞かれた。

一方、カナダについては、今後1~2年で事業を現状維持すると回答した割合が51.2%で、拡大すると回答した割合(43.9%)を上回った。「現状維持」と回答した企業からは、トランプ政権の通商政策により、市場の見通しが困難という意見が目立った。

上記を含め、本調査では、(1)営業利益見通し、(2)人手不足の課題と対応策、(3)賃金実態、(4)トランプ政権の関税政策の影響、(5)米国連邦政府の政策影響(米国のみ)、(6)サプライチェーン(調達・生産)の見直し、(7)事業展開の方向性、(8)ビジネスと人権、を紹介している。なお、11月20日に発表された、本調査(全世界編)の2025年度調査結果については、こちらから。

(注1)本調査は、海外に進出する日系企業の活動実態を把握し、日本企業・政策担当者向けに幅広く提供することを目的に、原則年1回、オンラインによるアンケート形式で実施しているもの。北米調査の実施期間は2025年9月4~25日。調査対象は北米進出日系企業(製造業・非製造業)のうち、直接出資および間接出資を含めて、日本の親会社の出資比率が10%以上の企業および日本企業の支店。有効回答数は652社/1,871社(有効回答率34.8%)。今回調査が米国では1981年以降44回目、カナダでは1989年以降36回目。過去調査結果はこちらから。

(注2)営業利益見込みが前年より「改善」したと回答した割合から、「悪化」したと回答した割合を引いた値。2025年の見込み値は「改善」が34.3%で「悪化」が30.3%となり、DIは4.0だった。

(注3)ジェトロが発信する、トランプ政権の米国関税措置に関する最新動向や分析などについては、特集ページ「米国関税措置への対応」を参照。

(滝本慎一郎、小谷田浩希、谷本皓哉)

(米国、カナダ、日本)

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