ジェトロ 2025年度 海外進出日系企業実態調査(全世界編) ―大きく変化する経営環境下でも、海外で稼ぐ日系企業―

2025年11月20日

本調査について

  • ジェトロは2025年8月~9月、海外82カ国・地域の日系企業(日本側出資比率が10%以上の現地法人、支店、駐在員事務所)1万7,708社を対象に、オンライン配布・回収によるアンケートを実施し、7,485社より有効回答を得ました(有効回答率42.3%)。
  • 米国による追加関税措置の影響、世界経済の減速と不確実性の長期化、労働供給の不足など、国際ビジネスを取り巻く外部環境が大きく変化する中で、海外進出日系企業の業績はどのように推移し、新たな課題にどう対応しているか。その最新動向を全世界横断で定量的に把握できる、本邦唯一の調査です。

調査項目:

  1. 営業利益見通し
  2. 今後の事業展開の方向性
  3. 米国の追加関税措置の影響
  4. 人手不足・賃金
  5. 人権尊重の取り組み

2025年度海外進出日系企業実態調査のポイント

  1. 営業利益見込みについて、2025年に黒字を見込む企業は2年連続で増加し66.5%。黒字企業の割合は、中東、南西アジア、中南米で7割を超え、アフリカも初めて6割を超えた。2026年の営業利益もさらなる改善を見通す企業が4割を超える一方、メキシコ、ブラジル、韓国など米国と取引が多い国で、業績悪化を見通す企業が増加。

    今後の事業展開の方向性では、インドで2年連続で「拡大」を志向する企業が8割超に。アフリカでは製造業の7割が拡大志向。製造業を中心にグローバルサウスでの事業拡大が続く。業種別では医薬品、食品・農水産加工品で拡大が7割を超える。

  2. 米国関税措置の影響では、対米輸出を行う企業全体では約4割、メキシコ、中国では5割超がマイナスの影響が大きいと回答。自動車・自動車部品のサプライチェーンでは、全業種ベースで約5割の企業に影響が及ぶ。今後の懸念として、米国市場での需要減少のほか、進出先市場における中国など第三国企業との競争激化を挙げる声が目立つ。対米輸出企業では、自社におけるコスト削減のほか、調達の分散化や販売網の強化で対応。具体的な対応策として、現地調達率の引き上げ、現地生産の開始、新規販売先の開拓などサプライチェーンの見直しに取り組む動きも。
  3. 人手不足は一層厳しさを増している。直近2年間の人材確保の状況では「悪化」が3割を上回り、中でも「今後の事業展開」で拡大割合の高いベトナム、ブラジル、インドで悪化傾向が顕著。人材獲得においては地場系が最大の競合だが、ベトナムでは中国系が最大。半数超の企業が福利厚生や労働環境改善、賃上げで対応する一方、大学連携やSNSを活用した採用や、スキルアップ支援や社内イベントを通じた定着率向上に取り組む企業もみられる。

    人権尊重の取り組みは進展がみられる。人権デューディリジェンスを実施する企業は3割を超えた。輸送用機器では実施が6割を超え、2023年度調査から大幅に上昇。「社内の人権リスクの低減」が約8割、「従業員の働きやすさの改善」が4割超と、自社の労働環境改善・従業員のエンゲージメント向上に繋がる効果を多くの企業が挙げた。

ジェトロについて
ジェトロは、貿易・投資促進と調査・研究を通じて、日本経済・社会の発展に貢献することを目的とする政策実施機関です。 世界56カ国76事務所などのネットワークを活用し、中小企業の海外展開支援や対日投資の促進などに取り組んでいます。

ジェトロ調査部国際経済課(担当:安田、田中、山田)
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