拡大するオーストラリア日本酒市場、5都市で酒フェスティバル開催
(オーストラリア)
シドニー
2025年10月15日
「オーストラリア酒フェスティバル(Australian Sake Festival)」が9月27~28日にシドニーで開催された。オーストラリアのメディア企業ジャムズ・ドット・ティーヴィー(JAMS.TV)が主催し、シドニーでの開催は4回目となる。今回は約70の酒蔵が参加し、約8,000人が来場した(2025年10月10日記事、10月15日記事参照)。同イベントは2023年以降、メルボルンでも毎年7月に開催。さらに、2025年からブリスベン(3月開催済み)、ゴールドコースト(10月予定)、キャンベラ(10月予定)でも開催され、規模を拡大している。2025年の来場者数は開催済みのシドニー、メルボルン、ブリスベンの3都市合わせて1万8,000人を超えた。
イベントでは、現地で毎年行われているオーストラリアン・サケアワード(国際日本酒コンクール)の2025年の受賞商品も展示された。
受賞商品の展示の様子(ジェトロ撮影)
シドニー会場の出展企業によると、例年に比べてリピーターが多く、日本酒の味を良く理解している消費者も増えていると感じたという。また、梅酒や柚子(ゆず)酒などの甘いリキュールが人気だった一方、日本酒では辛口を好む消費者も多いとの声も聞かれた。ワイン文化が根付くオーストラリアでは、ワインと同様に酒類全般に対してドライ(辛口)を好む傾向がみられる。
来場客の購買額は出展企業ごとにばらつきがあったが、1本150オーストラリア・ドル(約1万4,700円、豪ドル、1豪ドル=約98円)を超える高価格帯の商品を購入する消費者も多かったという。また、オーストラリアの企業が日本の酒蔵と共同でプロデュースしたブランドは前年より増加した。味、ラベル、価格などが現地の視点で設定されているため、消費者に受け入れられやすい傾向がある。さらに、商品開発者がオーストラリア国内市場にコネクションがあることで、日系以外の小売店やレストランなどにも積極的に販売できている。
オーストラリア企業プロデュースの商品(ジェトロ撮影)
日本からオーストラリアへの日本酒の輸出額は、2024年に約7億8,000万円だった。過去のピークだった2022年の9億3,000万円には達していないが、前年比21.4%増となった。これは新型コロナ禍で増えた、家飲み需要向け在庫が整理され、再び拡大したとみられる。
現地で販売される日本酒の種類は増えており、「いかに他商品との差別化を図り、消費者の目に留まるようPRするか」という点が重要になってきている。また、今後の日本酒販路のさらなる拡大にあたっては、日本食レストランやアジア系小売店に限らず、イタリアンやフレンチなど他のカテゴリーの飲食店や、現地のチェーン系酒類販売店への参入がカギを握るとみられる。
(小笠原まりさ)
(オーストラリア)
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