新潟の酒蔵、オーストラリアで販路開拓
(日本、オーストラリア)
新潟発
2025年10月15日
オーストラリア最大級の日本酒イベント「Australian Sake Festival」が9月27~28日、シドニーで開催された(注1)。新潟からは、酒蔵13社を含む県内企業が参加した。これに加え、新潟県酒造組合とジェトロは、新潟県の酒蔵限定のイベントを実施した。
9月26日には、酒類小売・輸入卸企業セラーメイツが新潟酒蔵限定の試飲販売会を主催した。同社の卸先のファイン・ダイニングレストランR by Raita Noda.において、同県内酒蔵5社の日本酒が振る舞われ、うち3社は蔵元が試飲販売を行った。参加した酒蔵にとっては、セラーメイツの卸先やその顧客層を知り、また、イベント来場者との直接的な交流を通じて、味の好みなどを把握する機会となった。清酒になじみのある来場者が多かったため、甘みを控えめにしたクラシカルなバランスのよい辛口の清酒を好む傾向にあった。なお、セラーメイツは2025年3月開催のにいがた酒の陣 2025
(注2)でジェトロが実施した商談会にも参加し、今回は新規取引やさらなる取引拡大の機会となった。
9月29日には、「新潟清酒ペアリングセミナー」と「新潟酒蔵限定商談会」を開催し、新潟県側から酒蔵5社が参加した。セミナーは酒サムライ(注3)のシモーヌ・メイナード氏が監修し、新規性のある商品を求める酒類インポーター8社に対して、5種類の新潟清酒に合わせたフレンチ・イタリアンのタパス5品を提供した。清酒をワイングラスで提供することで、現地のワイン文化・食習慣に沿った形式をとった。参加者からは、ミントやフェッタチーズが盛られたトマトと淡麗でキレのよい純米酒のペアリングなど、日本食やフュージョン料理にはないユニークな事例に関心が寄せられた。
ペアリングセミナーでの意見交換(ジェトロ撮影)
セミナー後には、酒蔵5社とインポーター8社による15件の商談が行われた。いずれの酒蔵もオーストラリアに販路がなく、商談を通じて新規取引の可能性を探った。酒蔵からは「共にブランドを築けるインポーター候補と出会えた」、インポーターからは「フレンチ・イタリアンにも合う新潟清酒を取り扱いたい」との声が上がった。
商談会の様子(ジェトロ撮影)
今後もオーストラリアでは、既存の清酒インポーターだけでなく、ワインやスピリッツを扱っていて清酒の取り扱いがない酒類インポーターに向けて、新潟清酒の魅力を発信し、市場開拓を進めることが重要となる。
(注1)Australian Sake Festivalについては2025年10月15日記事および2025年10月10日記事も参照。
(注2)にいがた酒の陣は、新潟県内の蔵元が一堂に会する日本最大級の清酒の祭典で、新潟県酒造組合が主催する。2025年には新潟県内酒蔵80社が出展した。ジェトロは6カ国7バイヤーを招聘(しょうへい)し、商談会を実施した。
(注3)酒サムライとは、日本酒の素晴らしさを世界に広めるために尽力する人に敬意を表する目的で、日本酒造青年協議会が称号叙任者を決定している。2025年9月11日時点で世界に105人が叙任している。
(卜部眞風)
(日本、オーストラリア)
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