欧州委、クリーン産業ディールの対外戦略を発表
(EU、中国)
ブリュッセル発
2025年10月28日
欧州委員会は10月16日、外務・安全保障政策上級代表と共同で、EUの気候・エネルギーに関するグローバルビジョン
を発表した(プレスリリース
)。グローバル市場におけるEUの競争力を維持・強化し、クリーンへの移行を加速する狙い。クリーン産業ディール(2025年3月4日記事参照)の対外戦略の位置づけで、既存のパートナーシップの強化と新たな相互利益に基づく関係構築を通じ、EUがグローバル市場にクリーン技術を供給・提供する中核を担い、域内の同産業に新たなビジネス機会を創出することを目指すもの。
背景にはクリーン技術分野のバリューチェーン全体で近年、中国がリーダーとしての地位を確立していることがある。2024年、中国は世界の電気自動車(EV)の70%以上、風力タービンの80%、太陽光発電モジュールの90%を製造したと指摘した。
欧州委のテレサ・リベラ執行副委員長(クリーン・公正・競争力のある移行、競争政策担当)は、EUは高い基準、ルールベースに基づくクリーンへの移行を行っており、信頼できるパートナーであると強調。同時に、海外でEU産業が競争力を発揮できるよう、グローバル・ゲートウエー(2025年7月3日付地域・分析レポート参照)などの投資プロジェクトとの連携を促進し、官民連携を支援する考えを示した。
具体的には、ハイレベルビジネス・貿易促進ミッションの派遣、EUのクリーン技術への輸出保証支援の検討、大型旗艦プロジェクトへの資金調達と実施支援などを行う。新たに「欧州対外クリーン移行ビジネス評議会(EU External Clean Transition Business Council)」を立ち上げ、特別調整官(EU Special Coordinator for the Global Clean Transition)を通じ、パートナー国における投資の優先順位付けや調整を行う。
また、主要パートナーとは個別の状況に応じた連携を行う。最大の温室効果ガス(GHG)排出国であり、再生可能エネルギー、重要原材料、クリーン技術分野のリーダーとして台頭している中国とは、炭素価格制度やエネルギー移行、メタン排出管理などへの協力を通じたGHG排出削減への協力(2025年7月30日記事参照)と同時に、公正な競争環境を求めていくとした。
ウォプケ・フックストラ欧州委員(気候・ネットゼロ・クリーン成長、税制担当)は、EUは2023年にGHGの排出量を1990年比で37%削減(2025年9月22日記事参照)と同時に経済は同年比で68%成長したとし、脱炭素政策と経済成長の両立を強調。GHG排出量の多い第三国の脱炭素化支援は継続するが、気候変動対策は競争力強化策であり、多国間協力をベースにEU産業の利益を明確にし、EU企業の新たなビジネス機会創出を前提とする方針を示した。
(薮中愛子)
(EU、中国)
ビジネス短信 9f77ec873d1b06f4




閉じる
