ブダペストでの米ロ首脳会談開催予定に対するハンガリー国内の反響
(ハンガリー、米国、ロシア、ウクライナ)
ブダペスト発
2025年10月21日
米国のドナルド・トランプ大統領は10月16日、自身の交流サイト(SNS)で、ハンガリーの首都ブダペストで、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と、ロシア・ウクライナ戦争終結協議のための米ロ首脳会談を開催すると発表した。ハンガリーにとって国際外交上重要なイベントとなることはもとより、国内でも大きな反響を引き起こしている。
ハンガリー政府はこの会談を「平和に向けた重要な一歩」と歓迎し、シーヤールトー・ペーテル外務貿易相は「ハンガリーは『平和の島』として、米ロ首脳会談開催をホストする準備が整っている」と述べた。 政府系メディアは、この機会がハンガリーの国際的な地位を高めると報じている。一方、野党や独立系メディアは、政治的利用だとして、同首脳会談の実際の成果には懐疑的な見方を示している。
また、元外務副大臣で外交専門家のセント・イバーニ・イシュトバーン氏は「プーチン大統領、トランプ大統領ともに、来年(2026年)のハンガリー議会総選挙でオルバーン(・ビクトル)氏(ハンガリーの現首相)の勝利を重要視しているため、米ロ首脳会談の場所がブダペストに決まったことは驚くべきことではない」と述べている。
ハンガリーのオルバーン首相は「ハンガリーは3年間、一貫して平和を支持してきた」「われわれは常に平和の声を上げ、外交関係を維持してきたからこそ、ここで(米ロ首脳)会談が行われるのだ」と語っている。一方、ハンガリーはEU加盟国の中で、国際刑事裁判所(ICC)からの離脱を表明している唯一の国で、他の全てのEU加盟国はプーチン大統領の逮捕状を執行する法的義務を負っているため、EU域内で会談を開催できる国がほかにないのも事実だ。
さらに、長期的展望として、この米ロ首脳会談を単なる政治的イベント以上のものとみる学者もいる。現代史学者のステファノ・ボットーニ氏は「オルバーン首相の国内でのイメージを強化する」と冷静に評価し、外交政策や安全保障の専門家のベンダルジェブスキ・アントン氏は「もし和平条件や戦争終結について合意に達することができれば、それは明らかに、ハンガリーとブダペストがロシア・ウクライナ戦争を最終的に終結させた場所として歴史に刻まれることになるだろう」と述べている。また、地政学専門家のシクローシ・ペーテル氏は「首脳同士が特に第三の場所で会談するのは、具体的な合意事項がある場合に限られる」と述べ、ブダペスト会談がウクライナ紛争の終結に向けた具体的な道筋を作る可能性があることを示唆している。
(バラジ・ラウラ)
(ハンガリー、米国、ロシア、ウクライナ)
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