米年末商戦のオンライン売上高は5.3%増と成長鈍化の予想、後払い決済の利用が過去最高の見通し

(米国)

ニューヨーク発

2025年10月09日

米国ソフトウエア大手アドビシステムズは10月6日、米国の年末商戦期間(11月1日~12月31日)のオンライン売上高が前年同期比5.3%増の2,534億ドルになるとの予想を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。トランプ政権下での関税政策の不確実性やインフレを背景に、2024年の伸び率(8.7%増)より鈍化する見通しだ。

発表によると、米国で年末商戦の始まりとされる感謝祭(11月27日)から翌週月曜日(ネット販売の大規模セール「サイバーマンデー」)までの5日間に実施されるオンラインセール期間「サイバーウィーク」の売上高は、前年同期比6.3%増の437億ドルになると予測され、年末商戦期間の売上高全体の17.2%に達する見込みだ。同期間中は、スポーツ用品、家電、玩具、衣料品など、輸入依存度が高く足元でも関税引き上げの影響が見られる商品(2025年9月12日記事参照)の大幅な値引きが予想されており、消費者はセール期間における支出をより増やす意向のようだ。中でも、割引率が大きい「サイバーマンデー」は前年比6.3%増、ブラックフライデーは8.3%増と、高めの伸びが予想されている。

同時に、物価上昇や労働市場の減速により家計が厳しさを増す中で、年末商戦中の後払い決済「バイナウ・ペイレーター(BNPL)」の利用も増加が予想されている。BNPLによる年末商戦期間中のオンライン支出は、前年の182億ドルから202億ドルに増加が見込まれている。また、サイバーマンデーにおけるBNPLを利用した支出額は、新たな節目となる10億ドルを突破し、過去最高額になると予測されている。

国際ショッピングセンター協会(ICSC)は、オンライン以外も含む年末商戦期間の売上高について、前年同期比3.5%増から4%増の範囲となると予想している。こちらも、全米小売業協会(NRF)が発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした2024年の伸び率(4%増)からは減速する見通しだ。ICSCが実施した消費者アンケート(注)では、回答者の71%が、関税による価格上昇を懸念し、年末商戦の買い物ではより慎重に選ぶ意向を示している。また、これに伴い、回答者の63%は大幅な値上げを行う小売業者からの購入を避けるとしている。消費者の間では、価格重視の傾向が顕著で、回答者の64%が2025年は特売品を探す時間を増やす予定とした。また、67%は割引率、期間、対象を絞った「限定オファー」の存在が店舗への来店意欲につながると回答した。小売事業者は関税コスト転嫁のタイミングや方法を探っているが(2025年9月3日記事参照)、消費者の慎重な傾向は、各社の価格転嫁戦略にも影響を与えることになりそうだ。

年末商戦では、企業がセールで需要を喚起し、消費者への価格転嫁を可能な限り抑制していく方針がとられる可能性が高いものの、どの程度、価格転嫁の抑制を継続できるかは不透明だ。価格転嫁の抑制は企業収益の低下につながり、これが労働市場の下押し圧力となっているとの指摘もある(2025年9月18日記事参照)。労働市場減速への懸念などは、消費者の警戒感をさらに高めることになる。民間調査会社カンファレンスボード(CB)が発表した9月の消費者信頼感では、労働市場に対する不安感の高まりから、5カ月ぶりの低水準に落ち込んでいる。

(注)実施時期は9月24~26日、対象者は全米の成人1,011人。

(樫葉さくら、加藤翔一)

(米国)

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