米FRBは6会合ぶりに利下げ、見解分かれる金融政策の先行き
(米国)
ニューヨーク発
2025年09月18日
米国連邦準備制度理事会(FRB)は9月16~17日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利のフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を大方の市場予想どおり、4.00~4.25%と、25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き下げることを決定した(添付資料図参照)。2024年12月のFOMC以来、6会合ぶりの利下げとなる。今回の決定に対しては、新任のスティーブン・ミラン理事(兼大統領経済諮問委員長)が50bpの利下げを主張して反対票を投じた。
今回発表した声明文で前回からの変更点は、主に雇用に関する部分に集中している。具体的には、(1)雇用の増加ペースは減速し、失業率はまだ低い水準ではあるものの、小幅に上昇、(2)(物価安定と雇用の最大化という2つの目標に対するリスクのうち)雇用に対する下振れリスクが高まっていると判断、(3)この双方のリスクバランスの変化の観点から、より低いFFレート誘導目標を設定することとしたなど、雇用の減速に対する強い警戒感がにじむ内容となっている。物価についても、「インフレは『上昇し』、やや高止まりしている」と修正しており、軽視されているわけではないが、リスクバランスは雇用により大きく傾いているかたちだ。
また、今回はFOMC参加者による経済見通しも示した(添付資料表参照)。金融政策の前提となる経済指標に関しては、成長率は、2025年が1.6%(6月発表の前回見通し1.4%)、2026年は1.8%(同1.6%)、2027年は1.9%(同1.8%)に上方修正した。インフレ率は、2026年のPCE、コアPCEがいずれも2.6%(同2.4%)に上方修正し、失業率は、2026年が4.4%(同4.5%)、2027年が4.3%(同4.4%)に下方修正した。前回見通しよりも若干ながら、経済の先行きは改善している。
こうした経済見通しの下、残り2会合となった2025年内の金融政策スタンスは大きく分かれている。同年のFF金利の予測中央値は3.6%と、2回分の利下げ予想となっているが、内訳では、1回分の利上げを予想する者が1人、利下げなしを予想する者が6人、1回分の利下げを予想する者が2人、2回分の利下げをする者が9人、5回分の大幅利下げを予想する者が1人となっている。2026年以降の予測中央値では、2026年が3.4%(予測中央値間の比較で1回分)、2027年が3.1%(同1回分)となっているものの、こちらもかなりのばらつきがある。
FOMC後の会見で記者からは、労働市場や関税引き上げの影響に関する質問などが出た。FRB側は、黒人などのマイノリティーや若年層の失業率が上昇していることなどに触れながら、「労働市場は軟化しつつあり、これ以上の軟化は望んでいない。」と述べ、雇用市場の軟化を回避する観点から、今回の利下げ措置を講じたことを強調した。さらに「関税コストについて、ある程度の転嫁は見られるものの、完全に転嫁はできていない」との見解を示し、その結果、労働需要により多くの影響を与えている可能性があることに言及した。
(加藤翔一)
(米国)
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