8月の米消費者物価指数、財価格中心に上昇傾向続く

(米国)

ニューヨーク発

2025年09月12日

米国労働省が9月11日に発表した8月の消費者物価指数(CPI)上昇率は、前年同月比2.9%(前月2.7%)、前月比0.4%(前月0.2%)となった。変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は、前年同月比3.1%(前月3.1%)、前月比0.3%(前月0.3%)だった(添付資料図1、表参照)。市場予想とおおむね一致する範囲内だったが、物価上昇基調は続いている。

品目別に前年同月比での伸びをみると、エネルギーは0.2%上昇と、7カ月ぶりに上昇に転じた。特に電気代については、4月以降高めの伸びが続いており、8月は6.2%上昇だった。人工知能(AI)ブームに伴う電力需要の増加などが価格上昇の背景にあるとされており、AI関連の設備投資は足元でも堅調に推移していることから、今後も高めの伸びが続いていく可能性がある。これに加え、「大きく美しい1つの法案(OBBB)法」の成立に伴ってクリーンエネルギー導入コストが増加することや、関税引き上げによる設備導入コストが上昇することなどが価格上昇を加速させる可能性があるとも指摘されている(「フォーブズ」8月19日)。

また、牛肉価格(13.9%上昇)などの上昇に伴って、食料品は3.2%上昇と、前月(2.9%上昇)から伸びが加速した。

これらを除いたコア指数でも、財部門は1.5%上昇(前月1.2%上昇)と伸びが加速した。8月は中古車が6.0%上昇するとともに、自動車部品など関連する分野が伸びた。サービス部門は、住居費の伸びが引き続き低下する一方、航空運賃などは高めの伸びを示した。全体としては3.6%上昇と、前月と伸び率は変わらなかった。(添付表、添付資料図2参照)。

瞬間風速を示す前月比でみると、財部門は0.3%上昇(前月0.2%上昇)、サービス部門は0.3%上昇(前月0.4%上昇)だった。財部門では、家電(0.4%上昇)や家具(0.3%上昇)などは依然として価格上昇が続いているものの、8月の伸びは幾分緩やかだった。その一方、衣類(0.5%上昇)は伸びが加速しており、秋・冬物の仕入れのタイミングで関税引き上げの影響が生じ始めたことを示唆している。小売り各社は顧客の動向や在庫、競争環境など個々の状況に応じて、さまざまなかたちで関税コストの価格転嫁を計画・実施しており(2025年9月3日記事参照)、価格上昇は短期間の一時的なものにとどまる可能性が高いとみられているものの(2025年8月25日記事参照)、これがいつ、どの程度まで続くのかは、現時点ではなお見通しにくい。

今回の結果は、財価格への上昇圧力がなお続いていることが確認される一方で、上昇幅が予想の範囲内にとどまったこともあり、市場では、FRBが9月17日に開催予定の次回の連邦公開市場委員会(FOMC)で、利下げを妨げる内容ではなかったと受け止められている。次回会合の焦点は、利下げペースがどの程度のものになるのかという点に移りつつある。

(加藤翔一)

(米国)

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