フランス政府、年金改革停止を修正書簡で明記
(フランス)
パリ発
2025年10月28日
フランス政府は10月23日、10月14日に国民議会(下院)に提出した2026年社会保障予算案(PLFSS)に年金改革の停止を盛り込む修正書簡を閣議決定した
(大統領府プレスリリース、フランス語)(2025年10月22日記事参照)。セバスチャン・ルコルニュ首相は14日の施政方針演説で、財政赤字を悪化させないことを条件に「2023年導入の年金改革を2027年の大統領選まで停止する」と約束していた(2023年4月20日記事、2025年10月16日記事参照)。
具体的には、1964年・1965年生まれの人の退職年齢を62歳9カ月に固定し、2028年1月まで据え置く。同様に、保険加入期間も42年6カ月(170四半期)で固定される。財源は、2026年に補完的医療保険機関(相互保険組合、民間保険会社など)への課税強化、2027年以降の基礎年金の再評価額引き下げで確保する。
修正書簡は、政府が社会保障予算を期限内に成立させられず、憲法47条に基づきオルドナンス(政府の委任立法権限に基づく法規)で成立させる場合でも、年金改革停止措置が確実に導入されることを保証するもの。これまでにオルドナンスにより予算が成立した前例はないが、政府への不信感が強い野党勢力は、修正予算案では年金改革停止がオルドナンスに反映されない可能性があると主張し、修正書簡の提出を政府に求めていた。
マクロン大統領は国民投票の可能性を示唆
エマニュエル・マクロン大統領は10月21日、訪問先のスロベニア・リュブリャナでの記者会見
(大統領プレスリリース、フランス語)で年金改革について、ルコルニュ首相が提案した案は「廃止や停止ではなく、2027年1月に予定されている退職年齢の63歳への引き上げを、2028年1月に延期し、その財源を歳出削減で賄うものだ」と述べた。大統領は「これにより、退職年齢の64歳への引き上げは2033年に先送りされた。年金制度の将来について、再び議論が必要だ」とし、国民投票の可能性にも言及。「まずは安定した予算審議を経て、労使間で冷静に再検討し、その上で進むべき道を決めるべきだ」と呼びかけた。
この発言は、政府に改革停止の意思がないという印象を与え、野党の中でも特に、年金改革停止を条件に内閣不信任案への支持を見送っている社会党(PS)の不信感を強めた。こうした状況を受け、ルコルニュ首相は21日と23日に緊急閣議を開き、社会保障予算案に追加する修正書簡を閣議決定する方針を示していた。
(山崎あき)
(フランス)
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