フランス政府、2026年の社会保障予算案を提出

(フランス)

パリ発

2025年10月22日

フランス政府は10月14日、2026年の社会保障予算案(PLFSS、フランス語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を国民議会(下院)に提出した。社会保障財政は深刻な赤字に直面しており、2025年の赤字は230億ユーロに達する見込みで、2024年の153億ユーロ、2023年の108億ユーロから急増している。政府は2026年に赤字を175億ユーロに縮小し、2029年までの財政均衡を目指す方針を示した。

赤字の主因は医療部門と老齢(公的年金)部門で、医療部門では2025年の赤字が172億ユーロに達する見込みだが、2026年は125億ユーロに抑える計画だ。医療保険支出目標(Ondam)の伸び率は前年比1.6%増に制限し、前年の3.4%増から大幅に低下する。具体策として、病気休暇の日数を制限し、開業医の診断書では15日間まで、病院は30日間までとする。患者による自己負担の年間上限額は50ユーロから100ユーロに引き上げ、薬や看護、リハビリなど補助的医療サービスに2ユーロ、救急搬送に8ユーロ、医療行為には4ユーロの負担を課す。これにより20億ユーロ超の歳入増が見込まれる。

公的年金部門では、老齢年金部門と無拠出性の老齢連帯基金(FSV)の赤字が2025年に58億ユーロに達する見込みで、2026年の支出目標は前年比1.3%増の3,074億ユーロに設定した。基礎年金は2025年水準で据え置き、2027年以降はインフレ率に連動する再評価額を0.4ポイント低く設定し、増加を抑制する。

社会保障給付は2026年も増加し、家族部門の支出目標は594億ユーロ(前年比0.1%増)に設定した。ただし、家族手当などではインフレ連動を停止する。一方、既存の産休・育休に加え、新たに「出生休暇」を創設し、両親が同時または交互に1~2カ月の追加休暇を取得できる仕組みを導入する。給付額は政令で定める予定だ。

社会保障予算案は11月12日に下院で採決される予定だ。同月4日からの審議では、セバスチャン・ルコルニュ首相が左派の社会党(PS)に約束した年金改革の一時停止を盛り込む修正案について審議する予定だ(2025年10月16日記事参照)。首相はこの譲歩によってPSの内閣不信任決議案への不支持を取り付けたが、PSは基礎年金の水準据え置きや医療費削減に強く反発し、修正を求めて政府への圧力を強めている。

こうした財政不安と政治的緊張を背景に、格付け会社S&Pグローバルは10月17日、フランス国債の格付けを「AA-」から「A+」に引き下げた。S&Pは、追加的な歳出削減策がなければ財政健全化が予想より遅れるとの懸念を示した。

フランスの労務関連情報については、ジェトロ「労務・税務関連情報」ぺージも参照を。

(山崎あき)

(フランス)

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