米経済先行き不透明感から、多くの小売業者が年末商戦の臨時雇用に慎重姿勢

(米国)

ニューヨーク発

2025年10月20日

米国アマゾンは10月13日、2025年の年末商戦に向けて25万人を採用する計画を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。それによると、採用枠には正規のフルタイムやパートタイム、季節労働者が含まれる。臨時雇用労働者の平均時給は19ドル、正規職は23ドルという。米メディアによると、アマゾンでは繁忙期の季節雇用の募集期間はおおむね10月から12月にかけて実施されており、今回の採用計画は過去3年連続で実施してきた採用水準に沿ったものだ。年末商戦ではオンライン上で大規模なセールが積極的に実施されることから、米国ソフトウエア大手アドビシステムズによると、同期間中のオンライン売上高が前年同期比5.3%増になると予想している(2025年10月9日記事参照)。

他方、米国の再就職支援会社チャレンジャー・グレイ&クリスマスは、2025年末商戦期間の小売業者による臨時雇用者数は50万人を下回る見込みだと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。2009年以来の過去最低水準になる。同社によると、米国の小売業者による季節雇用の発表は2025年に入ってこれまで限定的で、ホリデーシーズンの採用計画を公に約束している企業はほんのわずかだ。同社のシニアバイスプレジデントのアンディ・チャレンジャー氏は「今年は季節労働者が複数の要因が重なる状況に直面している。関税の脅威が迫り、インフレ圧力が継続する中、多くの企業は季節労働者の大量採用ではなく、自動化や正社員の雇用に頼り続けている」と指摘した。

過去数年とは異なり、小売業者は季節雇用に関する発表に慎重な姿勢を見せている。百貨店大手コールズは9月10日、臨時労働者を採用すると発表したが、具体的な人数は明らかにしていない。小売り大手のターゲットも、ホリデーシーズンに向けて人員採用の計画を発表したが、コールズ同様に具体的な人数は明らかにしなかった。季節雇用の計画が控えめになっている背景には、雇用市場全体の冷え込みがある。8月の雇用統計では、非農業部門の新規雇用者数は2万2,000人増と、予想を下回る伸びとなり、雇用減速のさらなる兆候を示した(2025年9月8日記事参照)。

経済全体の不確実性に加え、チャレンジャー・グレイ&クリスマスは、企業が人工知能(AI)ボット(注)を活用して一部の労働者、特にコールセンターで働く労働者の代替を図っているとも指摘した。また、企業がより必要な時期に労働者を採用する傾向も見られるという。

小売業者の採用計画は、米国の年末商戦の見通しを示す最初の手がかりとなる。2025年は景気減速を受け、複数の予測によると、ホリデーシーズンの個人消費は前年を下回る見込みだ。米クレジットカード大手マスターカード傘下のマスターカード経済研究所は、年末商戦(11月1~12月24日)の小売売上高は前年同期比3.6%増と、前年同期の4.1%を下回る見通しだ。大手会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PwC)は2025年末商戦の個人支出は2020年以降で、最大の落ち込みになると予想している(2025年9月4日記事参照)。

(注)オンラインチャットでの質問にAIが自動で返答するプログラム。

(樫葉さくら)

(米国)

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