米国の2025年末商戦の消費支出、2020年以降で最大の落ち込みの見通し、Z世代の支出削減が最も顕著

(米国)

ニューヨーク発

2025年09月04日

大手会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PwC)は9月3日、米国の消費者4,000人を対象に、6月26日~7月9日に実施した2025年米国年末商戦の見通しに関する調査結果を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。それによると、2025年の年末商戦期間の個人支出は前年同期比5%減少すると予想しており、2020年以降で最大の落ち込みとなる見通しだ。贈答品への支出が最も大きく減少し、1人当たりの平均支出予定額は1,552ドルの見込みだ。

世代別にみると、Z世代(17~27歳)の平均支出額が前年同期比23%減と、全世代のうち最大の減少幅となる見通しで、2024年の37%増から大幅な減少に転ずるかたちだ。PwCの消費市場業界リーダーのアリ・ファーマン氏は、インフレや雇用市場の不安と、新たな経済的負担がZ世代の支出を抑制していると指摘する。同氏は、新卒者に厳しい雇用市場の中で、多くの若年層が貯蓄もほとんどないまま、人生の大きな転換期を迎えているとした。中には初めて住宅を購入し、家族を持つ人もおり、より慎重に予算を立てざるを得ない状況にあると指摘した(NBCニュース9月3日)。

他方で、ミレニアル世代(28~43歳)の支出予定額は1%減にとどまり、前年同期のほぼ横ばいの見通しの一方、X世代(44~59歳)の支出額は2%増、ベビーブーマー世代(60~78歳)は5%増となる見込みだ。

なお、2025年の年末商戦は世代を問わず、消費者は価格重視の傾向が顕著だ。回答者の78%がより安価な代替品を求めており、65%はホリデーシーズン後の大幅な値下げを期待していると答えた。消費行動の慎重さは増しており、既に過去1年間で「割引」や「クーポンコード」のインターネット検索数は前年と比較して11%増加している。

トランプ政権の関税政策に伴う物価上昇や景気の先行き不透明感を背景に、消費者の購買行動や信頼感には、全体的に警戒感の高まりが示されている。同調査によると、回答者の84%は今後6カ月間で支出を全般的に削減する見込みと答えており、特に外食(52%)、衣類(36%)、高額商品(32%)で削減が顕著になる見込みだ。7月の小売り統計では、値上げ前の駆け込み需要の高まりなどの影響で、消費は伸びたものの(2025年8月18日記事参照)、今後は関税による価格転嫁が本格的に進行していく中で、個人消費の持続性に対する懸念が高まっている。

(樫葉さくら)

(米国)

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