8月の米雇用統計、労働市場の減速が一段と明確に、利下げ強く促す内容

(米国)

ニューヨーク発

2025年09月08日

米国労働省は9月5日、8月の雇用統計を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。それによると、失業率の上昇や、市場予想(7万5,000人増)を大きく下回る非農業部門の新規雇用者数など、労働市場の減速が一段と進んでいることを示しており、次回の連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げを強く促す内容となっている。

就業者数(前月差28万8,000人増)、失業者数(同14万8,000人増)、労働参加率(62.3%、前月から0.1ポイント上昇)を踏まえた失業率は4.3%(注1)となった(添付資料表1、図1参照)。8月は25歳から54歳のプライムエイジ層を中心に労働参加率が上昇する一方で、雇用の伸びが力強さを欠いた結果、16歳から24歳までの若年層を中心に失業者が増加する結果となった。また、広義の失業率(注2)は8.1%(前月7.9%)で、2021年10月以来の水準に上昇し、平均失業期間は24.5週(前月24.1週)と3カ月連続で長期化、失業者全体の中で27週以上失業している者の割合が25.7%に達するなど、求人の減少に伴って就職の困難さが増している様子が如実に表われている。

こうした雇用の伸びの鈍化は、非農業部門の新規雇用者数(2万2,000人増)でも確認できる。また、6月の数値が2020年12月以来初の減少となる1万3,000人減へと下方改定される(改定前は1万4,000人増)などした結果、3カ月移動平均では2万9,000人増と、前月と並んで新型コロナウイルス禍以降、最低水準となった。失業率が上昇しないための1つの目安とされる10万人の水準を下回るのは4カ月連続で、4月の相互関税発表以降、労働市場が早いペースで減速していることを示唆している。

内訳では、政府部門が1万6,000人減で、前月に続いて連邦政府の人員削減が中心だ。民間部門(3万8,000人増)では、増加は教育・医療(4万6,000人増)のほか、娯楽・接客業(2万8,000人増)や小売業(1万1,000人増)など、季節性の需要に関連した一部業種に限られている。他方、製造業(1万2,000人減)や卸売業(1万2,000人減)、対事業所サービス(1万7,000人減)、情報業(5,000人減)をはじめ、減少する業種も多くみられた(添付資料表2、図2参照)。

こうした労働市場の減速を受け、平均賃金の伸びもやや鈍化した。平均時給は36.5ドル(前月36.4ドル)で、前月比0.3%増(前月0.3%増)、前年同月比3.7%増(前月3.9%増)だった。過去数年間とは異なり、物価上昇圧力が継続する中でも、賃金上昇率の伸びはむしろ緩やかな低下傾向にあり、2025年末にかけて消費を下押しする圧力となりそうだ。

以上のように、8月の雇用統計は労働市場の減速を示す他の指標(2025年9月8日記事参照)とも整合するような内容で、連邦準備制度理事会(FRB)の2大目標である雇用最大化と物価安定のうち、雇用リスクの比重がより大きなものとなっていることを示している。このため、CMEグループの政策金利予測ツールFedWatch外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、FRBが9月17日に開催を予定する連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げはほぼ確定的との見方を示しており、焦点は利下げペースがどのようなものになるのかという点に移りつつある。

(注1)小数点第2位までの数値で比較すると、今月は4.32%と前月(4.24%)から0.08ポイントの上昇となる。

(注2)失業者に加え、「現在は仕事を探していないが、過去12カ月の間に求職活動を行った者」と「フルタイムを希望しているものの、非自発的にパートタイムを選択している者」を合わせて算定した数値。

(加藤翔一)

(米国)

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