第13次マレーシア計画下で初、2026年度国家予算は過去最高規模

(マレーシア)

クアラルンプール発

2025年10月16日

マレーシアのアンワル・イブラヒム首相兼財務相は10月10日、2026年度(2026年1月1日~12月31日)の国家予算案を連邦議会に提出した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます予算演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照)。アンワル政権が第13次マレーシア計画(2025年8月12日記事参照)下で編成する初の予算案で、財政の健全性と持続的成長の両立を目指す慎重かつ戦略的な内容と評される。

歳出規模は、過去最高額の4,192億リンギ(約15兆912億円、1リンギ=約36円)で、うち一般歳出が前年度比1.8%増の3,382億リンギ、開発費は1.3%増の810億リンギとした(添付資料表参照)。一般歳出は、公務員給与の引き上げ、年金や債務返済費の拡大で増額する一方、補助金や物品・サービス調達費は削減する。アンワル首相は、補助金合理化(注)により、年間155億リンギの公的資金節約につながったと説明した。一方、歳入は2.7%増の3,431億リンギで、結果として財政赤字の対GDP比は3.5%に改善する見通しだ。

同日発表した経済見通しでは、2025年の実質GDP成長率を4.0~4.8%、2026年は4.0~4.5%と予測した。2025年については、8月時点の政府見通しを据え置いた(2025年8月22日記事参照)。 

大幅な税制変更なく、国の成長と国民の生活引き上げを着実に実施

2026年度のテーマは「国民のための予算」だ。持続可能な財政と安定成長の両立を目指しつつ、国民を中心とした内容で編成した(2025年8月14日記事参照)。ユナイテッド・オーバーシーズ銀行(UOB)は予算案について、「大きな方向転換はなく、既存政策の微調整が中心」「ぜいたく税や炭素税を除き、大規模な税制改革も見られない(税制改正案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)参照)」とする一方、経済成長を下支えするための慎重、かつ的を絞ったアプローチだと分析した。注目すべき措置として、総額150億リンギ分の現金給付、ビジット・マレーシア2026関連のインセンティブ、高付加価値産業への支援、輸出企業への融資保証拡充などを挙げた。

財源確保のため、前年度予算でも言及した(2024年10月25日記事参照)鉄鋼・エネルギー分野を対象とした2026年中の炭素税導入や、たばこ・酒類への11月1日以降の物品税引き上げを盛り込んだが、大規模な税制改革は見送ったかたちだ。

高付加価値産業への主な支援策として、半導体、製薬、人工知能(AI)などの分野にターゲット型インセンティブを導入する。国家半導体戦略(NSS)の下(2025年3月10日記事参照)、研究開発支援として5億リンギを割り当てる。加えて、製造業とサービス業に対し、新産業マスタープラン2030(2023年9月7日記事参照)に連動した成果連動型の投資優遇措置を2026年から段階的に導入する。中堅中小企業に対しては、戦略的共同投資資金に2億リンギを充て、サプライチェーン強靭(きょうじん)化支援も行う。

写真 予算演説を行うアンワル首相兼財務相(財務省ウェブサイトより)

予算演説を行うアンワル首相兼財務相(財務省ウェブサイトより)

(注)直近政府は「BUDI95(ブディ95)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」制度に基づき、9月30日からRON95ガソリン補助金の合理化を全面開始。有効な運転免許証を持つマレーシア国民約1,600万人を対象に、月間300リットルを上限に、1リットル1.99リンギの補助価格を適用。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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