英アーム、半導体設計と技術提供でマレーシア政府と提携、国産チップ開発へ

(マレーシア)

クアラルンプール発

2025年03月10日

マレーシア政府は3月6日、半導体設計能力の向上と産業人材育成に向け、ソフトバンクグループ傘下の英半導体設計大手アーム・ホールディングスと提携することで合意した〔マレーシア投資開発庁(MIDA)プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます〕。

アームが提供する半導体の基本設計「コンピュート・サブシステム(CSS)」と、設計情報利用サービス「アーム・フレキシブル・アクセス(AFA)」に対し、マレーシア政府は10年間で2億5,000万ドルを同社に投じる。特に経済波及効果の大きい設計分野を育成し、2030年までに半導体輸出を2,700億ドルに拡大させたい考えだ。ラフィジ・ラムリ経済相は、年間売上高15億~20億ドル規模の半導体企業が国内で10社誕生することに期待を示した。

MIDAによれば、今回の提携は、投資貿易産業省(MITI)が立ち上げた新産業マスタープラン(NIMP)2030外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます国家半導体戦略(NSS)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)にも沿ったもので、3つの主要な取り組みを通じて国内半導体エコシステムの変革を目指す。具体的には、(1)1万人のIC設計エンジニアを育成する包括的プログラムを確立し、業界への強力な人材パイプラインを構築、(2)特定の国内企業にアームの最先端技術と知的財産(IP)ポートフォリオを優先的に提供、(3)国内で設計された半導体製品の開発を促進し、より高度なチップをマレーシアで生産する。マレーシア政府側は、経済省、財務省、MITI、同省傘下のMIDAなど主要省庁が連携し取り組みを推進する。

他方、アームにとっても、国家との提携は初めて。自社IPの利用を後押しすべく、首都クアラルンプールにASEAN初のオフィスを設立する。スランゴール州プチョン市で2024年8月に開業した東南アジア最大規模の半導体IC設計拠点でも、アームはパートナー企業として参画している(2024年5月1日記事参照)。

アンワル首相は「今回の提携はマレーシアの技術環境に根本的な変化を与え、同国に第2の半導体ブームをもたらす」と表現し、アームとの協力を通じた国産人工知能(AI)チップの開発へ意欲を見せた(首相スピーチ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。ザフルル・アジズ投資貿易産業相も「(アームとの提携は)多数のマレーシア人エンジニアを育成し、世界基準を満たすチップを国内生産する道を開くとともに、中小企業にはさらなる機会をもたらし、国民には高付加価値の雇用を創出する」とこれを歓迎した。

写真 合意式典でのパネル討論に登壇したラフィジ経済相(右から2人目)(ジェトロ撮影)

合意式典でのパネル討論に登壇したラフィジ経済相(右から2人目)(ジェトロ撮影)

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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