第4回「European Hydrogen Week」、欧州の強靭性のための水素の利活用を強調
(EU)
ブリュッセル発
2025年10月09日
欧州の水素利用を推進する業界団体ハイドロジェン・ヨーロッパ(Hydrogen Europe)は9月30日~10月3日、ベルギー・ブリュッセルで4回目となる「European Hydrogen Week」を開催した(注1)。前回(2024年12月5日記事参照)に続き、気候中立に向け水素の製造、利活用は必然であり、かつ欧州の強靭(きょうじん)性、エネルギー主権の観点からも必要である点を強調した。
ハイレベル政策会議の冒頭、2030年までに予定されている世界のクリーン水素への確定投資額(注2)は、2025年現在、510件のプロジェクトで1,100億ドルを超えたと紹介された。前年から350億ドル増加した一方、新規発表数は減少しており、過去18カ月で50件のプロジェクトが中止され、うち80%は初期段階の再生可能水素プロジェクトだった。地域・国別では、最大は中国の330億ドルで電解槽の導入で世界をリードしており、2位は北米の230億ドルで低炭素水素の生産と輸出で世界をリード。欧州は政策に支えられるかたちで、3位の190億ドル規模であり、水素市場をリードしていくための課題と取り組みが議論された(2025年10月9日記事参照)。
Hydrogen Europeの2025年版の年次報告書(Clean Hydrogen Monitor 2025)によると、再生可能エネルギー(再エネ)指令が加盟国で国内法化され、グリーン水素の定義に関する委任規則(2023年6月30日記事参照)に基づいた需要が創出されれば、グリーン水素を含む非バイオ由来の再生可能燃料(RFNBO)の需要は、2030年までに年間280万トン、電解装置規模では26ギガワット(GW、注3)規模が見込まれる。同年までの域内での生産規模予測は年間143万トン(同15GW規模)で、域外からの輸入を合わせ170万トンの見込み。ただ、2025年7月までに導入された電解装置容量は571メガワット(MW)で、2.84GWが建設中であるものの、EUの水素戦略で掲げた2024年までに6GW導入するとの目標値を大きく下回っている。27加盟国のうち、国家エネルギー・気候計画(NECP、2025年6月13日記事参照)または各国の水素戦略で2030年目標を設定した14カ国の電解装置容量の合計値は48GW規模となるが、現状の規制、市場感では十分な投資が呼び込めず、13GW規模にとどまる見込みと指摘した。
Hydrogen Europeは、欧州の強靭性とエネルギー主権のために、域内で水素を製造、貯蔵し、戦略的パートナーシップを通じた輸入先の多角化の重要性を強調した。
(注1)欧州委員会とクリーン水素共同実施機構(Clean Hydrogen Joint Undertaking、CHJU)との共催。展示会(2024年12月3日記事参照)は隔年開催の予定となり、2025年はハイレベル政策会議、BtoBフォーラム、イノベーション・フォーラムの会議のみの開催形式となった。
(注2)確定投資額は、最終投資決定(FID)、建設中、稼働準備、または既に稼働しているプロジェクトの金額。
(注3)GWなどで示す電解槽装置の規模は、クリーン水素の製造に必要な再エネの電力量でその規模感を表すことが多い。EUは、グリーン水素の供給目標として、2030年までに100GW相当のグリーン水素の電解槽を設置し、年間1,000万トンのグリーン水素の域内生産目標を掲げている(2023年6月9日付地域・分析レポート参照)。
(薮中愛子)
(EU)
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