グリーン水素の定義に関する委任規則が成立、EUに輸出する生産者にも適用

(EU)

ブリュッセル発

2023年06月30日

欧州委員会は6月20日、2023年2月に提案した、グリーン水素の定義に関する委任規則がEU官報に掲載外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされたと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます2023年2月15日記事参照)。EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会が共に委任規則案を否決しないまま、最長4カ月の審査期間が経過したことから、委任規則案が成立した。委任規則は、官報掲載から20日後の7月10日から施行される。

今回官報に掲載された委任規則は、2023年2月の欧州委提案から修正されておらず、再エネ購入契約などに基づいてグリッドから電力供給を受ける場合、グリーン水素と認められるためには、次の要件を原則として全て満たす必要がある。

  1. 追加性:グリーン水素生産のために追加的に設置された(水素生産施設の稼働の36カ月より前に稼働を開始していない)新設施設で発電された再エネ電力の供給を受けること
  2. 時間的相関性:水素生産と再エネ発電が同一の1時間以内に行われること
  3. 地理的相関性:水素生産施設と電力供給を受ける再エネ発電施設が同一あるいは相互に接続された電力入札ゾーンに位置していること

ただし、グリーン水素の早期生産拡大に向けた移行期間として、追加性要件に関しては2027年末まで適用が免除、時間的相関性に関しては2029年末まで「同一の1時間以内」から「同一の1カ月以内」に要件が緩和される。

グリーン水素の定義を巡っては、欧州委は当初、2022年5月に委任規則案(2022年5月27日記事参照)を提案したものの、欧州議会は認定要件が厳格過ぎるとして否決していた(2022年9月26日記事参照)。一方で、否決を受けて新たに提案された2023年2月の委任規則案は、移行期間の後ろ倒しはあったものの、2022年5月の委任規則案で提案された追加性、時間的相関性、地理的相関性の各要件をおおむね維持。この委任規則案が成立したことから、結果として、グリーン水素の定義は当初の提案から大幅な修正なく施行されることになる。

委任規則が規定するグリーン水素の定義は、2030年までにグリーン水素の域内供給2,000万トンを目指すEUの野心的な水素政策(2023年6月9日付地域・分析レポート参照)における規制枠組みの一部で、グリーン水素の域内生産や域外からの輸入などに適用される。

(吉沼啓介)

(EU)

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