トランプ米大統領、TikTok売却を承認する大統領令を発表

(米国、中国)

ニューヨーク発

2025年09月29日

米国のドナルド・トランプ大統領は9月25日、中国のバイトダンスの動画共有アプリ「TikTok」の米国事業の売却を承認する大統領令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。

米国では2024年4月に、TikTokの米国事業が米国企業に売却されるなど適切に分割されない限り、2025年1月に同アプリの提供などを禁止する「外国敵対勢力が管理するアプリから米国人を保護する法(TikTok規制法)」が成立した。だがトランプ氏は、同法の執行をこれまで4回にわたって延期し、新たな期限を12月中旬としていた。その間、米中両国は米国事業の存続に向けた協議を重ね、9月にスペイン・マドリードで行われた協議後には、合意間近と報道されていた(2025年9月24日記事参照)。

今回発表された大統領令によれば、TikTokの米国事業は、米国を拠点に新設される合弁企業が運営する。当該企業の株式は、米国人が過半数を所有し、バイトダンスなどの所有は20%未満となる。また、アルゴリズム・コードの運用などは新合弁企業が管理し、米国の機密ユーザーデータは米国企業が運営するクラウドに保存される。これらより、トランプ氏は、約1億7,000万の米国人が引き続きTikTokを利用しつつ国家安全保障も保護されると判断した。なお、本売却計画を完了するため、大統領令の発表日から120日間、TikTok規制法を執行してはならないとも定めた。

同日に発表したファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによれば、米国IT大手オラクルがセキュリティープロバイダーとして機能し、米国におけるTikTok業務の安全性を独立して監視、保証する。また、7人で構成される取締役会のうち、バイトダンスが指名できるのは1人のみで、同社は合弁企業のセキュリティー委員会から除外される。

今回の大統領令により、バイデン前政権下から続く米中間の火種の1つが一応の決着を見たかたちだが、連邦下院議会の「米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会(中国特別委)」のジョン・ムーレナー委員長(共和党、ミシガン州)は9月26日、TikTok規制法が定めた要件は売却のみではないとし、同法は「バイトダンスとTikTok(米国事業の)承継企業とのアルゴリズムに関する協力、運営上の連携を排除する厳格な規制を設けた。中国特別委の委員長として、本合意に対する全面的な監視を実施する」「TikTokの新たな経営者を2026年開催予定の特別委員会公聴会に招致することを楽しみにしている」との声明を発表した。

なお、米中間ではそのほか、中国企業が所有や運航する船舶や中国で建造された船舶などの米国入港に対する追加料金の適用開始が10月14日に(2025年6月11日記事参照)、米国の対中相互関税の留保期限が11月10日に迫っている(2025年8月13日記事参照)。これらの両国間の懸案事項などを踏まえ、両国首脳は10~11月に韓国で行われるAPEC首脳会議にあわせて会談するとみられている。

(赤平大寿)

(米国、中国)

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