ドイツ、8月の失業者数が2015年以来10年半ぶりに300万人超え

(ドイツ)

ベルリン発

2025年09月19日

ドイツ連邦雇用庁は8月29日、2025年8月の失業者数が300万人を超えたと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、ドイツ語)。ドイツで失業者数が300万人を超えるのは2015年2月以来10年半ぶり。8月の失業率は6.4%に上昇し、前年同月比では0.3ポイント高い。前月比では0.1ポイントの上昇となった。ただし、失業者数の増加は夏季休暇による季節要因が大きいとされており、季節調整済みの失業率は前月同様に6.3%、失業者数は前月比で9,000人減少した。

同日、連邦労働・社会省も労働市場についてのコメントを発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、ドイツ語)。世界経済の不確実性やウクライナ戦争の継続が依然として景気の減速や労働市場に影響しているが、ベアベル・バース労働・社会相は「連邦政府は、投資ブースター(2025年7月22日記事参照)のように的を絞った投資奨励策や大規模なインフラ整備など、重要な刺激策を講じて状況に対応している。ドイツの労働者と産業を全面的に支援する」と表明した。

労働市場は業種によって雇用動向に差があり、製造業は2025年6月時点で、前年同月比2.2%、14万6,000人分の雇用が減少した。ドイツの輸出不振(2025年7月24日記事参照)や米国とEUの関税をめぐる交渉などが要因とされる(2025年9月2日記事参照)(ドイツ公共放送ARD「ターゲスシャウ」2025年8月29日)。

小売業でも雇用減が継続しているが、対照的に医療や介護、教育など公共サービス分野では雇用が大幅な拡大傾向にある。経済紙「ハンデルスブラット」(9月1日付)によると、連邦雇用庁長官のアンドレア・ナーレス氏は、このような業種ごとの動向の相違を「労働市場の分断」と評している。同氏は、成長分野と縮小分野の乖離が拡大していると指摘した上で、産業の縮小がドイツ経済全体にネガティブな影響を及ぼしかねないという懸念を示している。

「フランクフルター・アルゲマイネ」紙(8月29日付)は、失業者数が300万人を超えた今回の状況について、2015年当時のような一時的上昇ではなく、長期的な停滞の兆しがあると懸念を示した。政府が社会保障支出を拡大する一方で、産業の自律的な回復が望めない点を指摘し、基礎的失業水準(構造的失業率)が景気循環のたびに上昇しかねないと、警鐘を鳴らしている。

(打越花子)

(ドイツ)

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