企業投資促進法案がドイツ上下両院で可決、経済効果に期待の声
(ドイツ)
ベルリン発
2025年07月22日
ドイツ連立政権が提出した「ドイツの経済拠点強化のための税制投資即時プログラム」法案が6月26日に連邦議会(下院)、7月11日に連邦参議院(上院)で、それぞれ可決された(プレスリリース)。ドイツ経済は2023、2024年と2年連続のマイナス成長を記録し、2025年も低成長が見込まれる中(2025年6月3日記事参照)、「投資ブースター」と呼ばれるこの法率によって減価償却の優遇策や減税措置を軸に、企業の投資促進を図る。
主な内容は次のとおり。
〇投資促進に向けた減価償却の定率法導入
7月1日から2027年12月31日までに取得した動産(不動産は除く)に対し、定率法で最大30%の減価償却が可能。取得翌年度以降も残存価額に対して30%ずつ償却し、最初の3年間で投資額の約3分の2を償却することが可能。
〇2028年から法人税の段階的引き下げ
現在15%の法人税率を2028年から2032年までの5年間にわたり、毎年1%ずつ引き下げ、最終的に10%まで減税。法人税率、連帯付加税、営業税の3つの税を合わせた総税負担率が現在約30%だが、2032年には25%弱となる見込みで、ビジネス拠点としての魅力と国際社会での競争力向上を狙う。
〇社用電気自動車(EV)購入促進
7月から2027年12月末までに企業が社用車として新たに電気自動車(EV、注)を購入した場合、取得初年度に75%を償却可能(2025年7月17日記事参照)。さらに、EVの特別税制優遇措置の対象となる車両の価格上限を現在の7万ユーロから10万ユーロに引き上げる。この措置の目標はドイツ国内のEVの普及にあり、対象には乗用車のみならず、トラックやバスなどあらゆる種類の車両も含む。
〇研究投資促進措置
研究投資を促進するため、2026年から2030年にかけて、税額控除の対象となる研究開発費用の年度別上限額を1,000万ユーロから1,200万ユーロへ引き上げる。また、間接経費を対象経費の20%と見なして申請可能となり、事務手続きの簡素化を実現することで、官僚主義を軽減し、特に中小企業にとっての研究投資の促進を図る。
ケルン経済研究所(IW)の試算によると、今回の措置で企業側の負担は大きく軽減される(プレスリリース)。定率法による減価償却で総額260億ユーロ、法人税率の段階的な引き下げにより累計で140億ユーロの負担軽減が見込まれる。また、2025〜2029年に企業の実質投資額は160億ユーロ増加、年平均でGDPは0.15%上昇、1万4,000人の新規雇用創出が見込まれている。財政赤字は対GDP比で0.3ポイント、債務残高比率も0.5ポイントの増加と試算するが、IWは同法案を投資の活性化と競争力の向上に向けた重要な一歩と位置付けている。
(注)対象となるEV車の定義は、ドイツ自動車税法第9条第2項が適用される。同条項によると、「電動モーターのみで駆動し、そのエネルギーが完全、または主に機械的、または電気化学的なエネルギー貯蔵装置、または排出ガスを出さないエネルギー変換装置から供給される車両(電気自動車)」とされている。
(打越花子)
(ドイツ)
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