ドイツの対米貿易は輸出大幅減、対中貿易は輸出減・輸入増が鮮明に
(ドイツ、米国、中国)
ベルリン発
2025年07月24日
ドイツ連邦統計局が7月8日に発表した最新の2025年1~5月の貿易統計速報(プレスリリース)によると、同期間の輸入総額は約5,661億ユーロで、前年同期比4.6%増加した。輸出総額は約6,550億ユーロで、同0.2%増加だった。輸入拡大に輸出増加が追い付かず、貿易黒字は約889億ユーロで、前年同期の約1,122億ユーロから大きく縮小した。
特に最大の輸出相手国・米国向け輸出の落ち込みが顕著だ。5月は約121億ユーロと、前月比で7.5%減少し、2022年3月の約119億ユーロ以来の低水準となった。4月は前月比10.2%の輸出減で、米国の関税措置導入前にみられた企業による駆け込み輸出の反動が表れている。
一方、米国からの輸入は2025年1~5月で約390億ユーロと、前年同期比で0.6%増加したものの、5月単月では前年同月比で8.1%減、前月比で11.3%減と大きく落ち込んだ。ハレ経済研究所(IWH)の分析によると、関税が大幅に引き上げられるとの予想から、2025年第1四半期(1~3月)には米国からの輸入が急増したが、その後の需要は落ち着いたとみられる。
中国向け輸出も減少傾向にあり、2025年1〜5月累計で約349億ユーロと、前年同期比13.8%減少した。経済紙「ハンデルスブラット」(7月8日)は、中国がドイツから輸入していた多くの製品を自国で製造するようになったことが背景にあると報じている。
他方で、中国からの輸入は同期間で約683億ユーロに達し、前年同期比で10.1%増加となった。中国の対米輸出での減少分が欧州市場に流入していると同紙は報じており、ドイツの輸入構造における中国依存の強さが浮き彫りになっている。
ドイツ連邦銀行(中央銀行)の2025年7月月報によると、輸出減少傾向は2017年から継続しており、2021~2023年の輸出市場シェア縮小の4分の3以上は、国内製造業の競争力低下によるものだとしている。特に機械産業、電気産業、化学産業をはじめとするエネルギー集約型産業の輸出減が顕著で、これは、サプライチェーンの混乱やエネルギー価格の高騰による各セクターの競争力低下が主因とみられる。また、自動車・同部品、航空宇宙技術に関しては、世界的な需要の低迷が輸出減少の背景にあると分析されている。いずれにせよ、長期的な輸出減の傾向は、ドイツ経済に供給側の構造的な問題が存在することを示唆しており、競争力回復に向けた対応の必要性が高まっている。
(打越花子)
(ドイツ、米国、中国)
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