ブラジル政府、米追加関税に対する輸出企業支援措置を発表
(ブラジル、米国)
サンパウロ発
2025年08月21日
ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は8月13日、米国によるブラジルへの相互関税と40%の追加関税措置(2025年4月3日記事参照、2025年8月1日記事参照、2025年8月6日記事参照)への対応として、輸出企業支援を目的とした大統領暫定措置令(MP)第1.309号を公布し、即日施行された。主な内容は次のとおり。
- 融資制度の創設:米国向け輸出企業を対象に、雇用維持を条件とした低金利融資制度を創設。予算規模は300億レアル(約8,100億円、1レアル=約27円)を見込む。詳細は未定だが、融資を受けるための審査では、輸出で米国向けの依存度、品目特性、企業規模などを考慮する。
- 関税払戻(ドローバック)制度:ドローバック制度を活用すると、輸出産品に使用される輸入部品や資材などは、輸入税や工業製品税(IPI)といった連邦税が保留または免税となる。ただ、輸出実績を証明することを義務付けている。この度の措置では、米国向け輸出を断念した企業に対し、輸出期限の1年延長が認められる(注1)。
- 連邦税の納税猶予:米国によるブラジルへの40%追加関税の影響を受けた企業に対し、連邦税の納付を2カ月猶予する措置を導入する。
- 政府調達による農業支援:米国向け輸出が困難となった農産品(40%の追加関税の対象となった農産品)については、連邦政府や自治体が当該農産品を購入し、学校給食や病院食などに活用可能とする。
- 貿易保険制度の改善:輸出企業を支援するため、輸出不能や代金回収不能などをカバーする連邦政府の貿易保険制度を改善する。制度改善に当たり、総額45億レアルの追加拠出を行う。例えば、中小輸出企業向け制度の新設を含む貿易保険制度の改善を予定する。同保険制度の対象は、中小企業、かつ従業員の解雇を行っていないことが条件。
- 輸出振興の税務恩典制度:現在運用している輸出企業に対する特別税務恩典制度「レインテグラ(REINTEGRA)」では、輸出額に対して0.1%(零細・小企業の場合は3%)の税制クレジットが付与され、このクレジットを連邦税の相殺に充てることができる。この度の米国の追加関税措置によって負担を抱えた企業に対しては、施行日から2026年12月までの間、税制クレジット付与のための輸出額に対する比率は最大3ポイント引き上げ、大・中企業が最大3.1%、零細・小企業が最大6%となる(注2)。
ブラジル全国工業連盟(CNI)は公式サイト(8月13日付)で、連邦政府の対応策を歓迎した。ブラジル果物輸出業者協会(Abrafrutas)は公式リリース(8月13日付)で、同対応策を評価しつつ、「輸出事業者を対象にする措置が発表されたが、輸出事業者に農産品を供給する小規模農家が放置される恐れがある」と懸念を表明した。また、ブラジルコーヒー輸出者評議会(Cecafé)の総合ディレクターを務めるマルコス・マトス氏は8月15日付現地紙「グローボ」のインタビューで、融資制度には、運用に関して不明点も多いため、詳細説明を求める姿勢を示した。
(注1)関税払戻(ドローバック)制度の詳細については、ジェトロの関税制度を参照。ドローバック制度の下では、輸出産品に使用する目的で輸入する部品の代金支払いを行った後、企業は開発商工省(MDIC)貿易局に申請書を提出することで、連邦税の保留を受けることができる。ただ、保留を受ける条件として、完成した製品を1年以内に輸出しなければならない。輸出が行われない場合は納税義務が発生する。この度の措置では、連邦税の保留を受ける期間が1年延長できるようになった。なお、米国向け輸出を断念し、第三国向け輸出を行った際も対象となるが、米国向け輸出を試みたことを証明しなければならない。
(注2)なお、MP第1.309号にはレインテグラに関する明記はないが、副大統領兼開発商工サービス相のジェラウド・アルキミン氏は8月13日に行われた記者会見で「レインテグラを含む」と説明した。大統領府も同内容のリリースをしている。
(エルナニ・オダ)
(ブラジル、米国)
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