トランプ米大統領、対ブラジル追加関税を40%引き上げる大統領令発令、ただし4割強が対象外
(米国、ブラジル)
ニューヨーク発
2025年08月01日
米国のドナルド・トランプ大統領は7月30日、ブラジルからの輸入に対して40%の追加関税を課す大統領令を発令した。現在課している10%のベースライン関税に上乗せし、追加関税率は50%に引き上がる。これは同大統領令の発令日の7日後の米国東部時間午前0時1分に発効する。具体的な発効日は近日中に官報で公示する。
ファクトシートによると、追加関税は国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく。ブラジルによる米企業の利益や米国民の人権の侵害などが米国の国家安全保障、外交政策、経済を脅かす緊急事態に当たるとして、追加関税の根拠を説明した。また、ジャイール・ボルソナーロ前大統領に対する「政治的迫害」がブラジルの法治や人権を脅かしていると主張した(注)。
40%の追加関税は一般関税率(MFN税率)など既存の税率に上乗せする。ただし、次の品目は対象外となる。(1)個人手荷物など合衆国法典第50編第1702条(b)の対象品目、(2)同大統領令の付属書1(Annex 1)の掲載品目、(3)同大統領令の発令日の7日後の米国東部時間午前0時1分までに米国への輸入に向けて積み出し港で最終輸送手段の船舶に積載され、米国東部時間10月5日午前0時1分までに米国での消費を目的に輸入された貨物、(4)1962年通商拡大法232条に基づく既存および将来の措置の対象品目。また、(5)同大統領令の発令日の7日後の米国東部時間午前0時1分以降に外国貿易地域(FTZ)に輸入された貨物は、米国での消費を目的に輸入されるまで関税が留保される。
なお、(2)の付属書1には、金属ケイ素、銑鉄、民間航空機・同部品、冶金(やきん)用アルミニウム、スズ鉱石、木材パルプ、貴金属、エネルギー・同製品、肥料など、米国関税分類番号(HTSコード)8桁で694品目が含まれる。2024年のブラジルからの米国の輸入額(通関ベース)は423億ドルで、このうち付属書1の掲載品目の輸入額は43%(184億ドル)を占める。
2024年の両国間の財貿易収支は、米国の68億ドルの黒字で、貿易赤字などを発動理由にした2025年4月の相互関税の発表時点では、ブラジルに相互関税は設定していなかった(2025年4月3日記事参照)。しかし、トランプ氏は7月9日に、同国に50%の追加関税を課す意向を示した書簡を発表していた(2025年7月10日記事参照)。
このほか、米国通商代表部(USTR)は7月15日に1974年通商法301条に基づく調査を開始している。調査結果によっては、ブラジルからの輸入にさらなる追加関税などの輸入制限措置を講じる可能性がある(2025年7月17日記事参照)。
(注)財務省と国務省
は7月30日、ブラジル最高裁判事のアレクサンドル・デ・モラエス氏が政治的動機に基づいて職権を乱用し人権侵害に関与したなどとして、グローバル・マグニツキー人権問責法に基づき、同氏を金融制裁対象に追加したと発表した。
(葛西泰介)
(米国、ブラジル)
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