トランプ米大統領、医薬品原薬の戦略的備蓄確保の大統領令発令
(米国)
ニューヨーク発
2025年08月15日
米国のドナルド・トランプ大統領は8月13日、米国の強靭(きょうじん)な医薬品サプライチェーンの構築に向け、保健福祉省(HHS)に対し、医薬品原薬(API、注1)の備蓄を指示する大統領令を発令した。新型コロナウイルス禍の2020年に設置した戦略的医薬品原薬備蓄(SAPIR)を補充する。
ホワイトハウスが同日に公表したファクトシートでは、医薬品の製造に使用されるAPIは約1割しか国内で製造されておらず、サプライチェーンの混乱に対して脆弱(ぜいじゃく)な状態にあると問題視した。また、現在のSAPIRは「ほぼ空の状態だ」と指摘した。こうした状況に対処するため、トランプ氏は同大統領令で、HHSの事前準備・対応担当次官補局(ASPR)に対し、国民の健康と安全の確保に重要な約26種類の医薬品のリストを作成し、これら医薬品の製造に使用されるAPIの6カ月分の備蓄の確保と維持を指示した。その確保に当たっては、国内で製造されたAPIの優先的な確保も求めた。加えて、ASPRに対し、2022年に作成した86種類の必須医薬品リストを更新し、これらの医薬品の製造に使用されるAPIの6カ月分の備蓄の維持や、保管施設の追加設置に向けた計画の策定を指示した。
トランプ氏は同大統領令で、APIを備蓄することの意義について、「APIは一般的に完成品の医薬品よりも安価で有効期限が長い」「外国への依存を軽減する効果もある」「政府によるAPIの調達は、国内のAPI生産を促進する可能性がある」(注2)などと説明した。
なお、商務省は2025年4月に1962年通商拡大法232条に基づき、医薬品の輸入が米国の国家安全保障に及ぼす影響を判断するための調査を開始している(2025年4月15日記事参照)。自動車(追加関税率25%)や鉄鋼・アルミニウム・銅(同50%)の輸入に対する米国の追加関税も232条に基づく措置で、医薬品に対しても、追加関税などの輸入制限措置が今後発動される可能性がある。トランプ氏は8月5日に行われた米ビジネス専門メディアCNBCによるインタビューで、医薬品に関税を課す意向を示し、「当初は低率の関税を課す」「1年~1年半後には関税率を150%に引き上げ、最終的に250%まで引き上げるつもりだ」などと述べている。
(注1)医薬品の成分のうち、目的とする効果を示す有効成分。
(注2)トランプ氏は国内の医薬品生産基盤の強化に向けて、2025年5月に医薬品やその原材料の生産に関する規制を緩和する大統領令を発令している。
(葛西泰介)
(米国)
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