中国人民銀行など7部門、新型工業化への金融支援に関する指導意見発表

(中国)

武漢発

2025年08月12日

中国人民銀行(中央銀行)など7部門(注1)は8月5日、「新型工業化への金融支援に関する指導意見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。指導意見は、質の高い次世代型工業化を意味する「新型工業化」に対する金融面の支援を目的としており、産業政策と金融政策の連携強化や、過度な競争を指す「内巻」の是正などを方針としている。

指導意見は、(1)全体方針、(2)産業の先端技術・イノベーション、産業チェーン・サプライチェーンの強靭(きょうじん)化に向けた支援、(3)現代産業システム構築に向けた支援、(4)産業の合理的配置と発展に向けた支援、(5)金融分野の新型工業化支援体制の強化、(6)金融政策と産業政策の連携強化の計6項目に分かれている。

(1)では、2027年までに製造業の高度化、スマート化、グリーン化などをサポートする金融体制を整備するとした。金融商品を充実させることで、ローン、債券、株式、保険といった各商品が互いに連携・補完し合い、サービスの適応性を向上させるとした。

(2)では、金融政策ツールを用い、集積回路、産業機械、医療機器、サーバー、計測機器、基幹・産業ソフトウエア、先進材料など、製造業の中でも重点的な産業チェーンに関わる技術と製品の開発に対して、銀行による中長期的な融資を促すとした。

(3)では、従来型の製造業での金融サービス最適化、産業の高度化を図るとした。環境問題の解決に向けたプロジェクトを対象とした金融商品を通して、低炭素・循環型の産業発展を支援することなどを盛り込んだ。また、金融機関はビッグデータ、ブロックチェーン、人工知能(AI)などの先進的なツールを活用し、業務効率化によるサービスの向上を行う。そのほか、デジタルインフラの構築に対し、中長期的な融資による支援を行うとした。

(4)では、金融機関による金融リソース配置を最適化し、中国の中西部や東北部などへの産業移転に融資を提供するとしたほか、国際金融サービスの利便性を向上させるとした。

(5)では、金融機関は「新型工業化」に対する支援を長期経営戦略の中に盛り込み、製造業に対する中長期の融資、無担保貸し付けといった支援を拡大するとした。

(6)では、政府部門による情報共有や政策連携を通して、マクロ政策の方向性を一致させるとともに、資金の違法な取得や流用リスクを防ぐほか、「内巻」の防止を支援するとした(注2)。

(注1)中国人民銀行、工業情報化部(工信部)、国家発展改革委員会、財政部、国家金融監督管理総局、中国証券監督管理委員会、国家外貨管理局の計7部門。

(注2)「内巻」とは、過度な競争を指すもので、近年特に価格競争の激しい国内の自動車市場などで問題視されており(2025年7月25日付地域・分析レポート前編後編参照)、産業界からは解決に向けた提案も行われている(2025年6月9日記事参照)。

(西島和希)

(中国)

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