オーストラリア産牛肉、米国の通商政策も追い風に輸出拡大
(オーストラリア、米国)
シドニー発
2025年08月07日
米国のトランプ政権の通商政策も追い風となり、オーストラリア産牛肉の輸出が拡大している。オーストラリア産牛肉の主要な輸出先は米国、中国、日本、韓国だが、近年はそのうち米国、中国向けが牽引し、2024/2025年度(2024年7月~2025年6月)の牛肉輸出量は史上最高値となる144万4377トン(前年同期比19.8%)を記録した。
この背景には、グローバル市場でオーストラリア産牛肉の競争優位性の高まりと市場多角化の戦略がある。前年から干ばつの影響で米国の牛肉生産が減少し、国際市場でオーストラリア産牛肉の存在感が増していた。さらに、米国の関税措置によって特に中国などとの貿易摩擦が深刻化し、中国市場では米国産牛肉からオーストラリア産牛肉へのシフトが進み、今回の記録更新につながった。また、米国市場でも、2025年4月に10%の相互関税が課された後も需要は衰えず、オーストラリア・ドル安と米ドル高で推移する為替環境や、競合するニュージーランド産牛肉の生産減などで、相対的にオーストラリア産牛肉の競争力が高まっている。加えて、米国、中国などの巨大市場に限らず、インドネシアやカナダ、中東諸国といった地域への輸出量も増加傾向で推移しており、輸出市場の多角化を目指す業界の取り組みの成果が表れている。
米相互関税の見直しに伴い、競争力はさらに向上
米国のドナルド・トランプ大統領は7月31日、4月に発表した相互関税を修正する大統領令を発表した(2025年8月1日記事参照)。オーストラリアは10%の相互関税が据え置かれた一方で、米国市場で競合するニュージーランドは15%、ブラジルは追加関税を含めて50%の関税(2025年8月1日記事参照)が課されたことから、今後、米国市場でオーストラリア産牛肉の競争力はさらに高まることが予想される(添付資料表参照)。なお、同じく競合国のカナダ、メキシコについては、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の原産地規則を満たした品目は追加関税が免除となり、牛肉もその品目に含まれているが、両国は主に穀物で肥育した高価格帯の牛肉を輸出する一方で、オーストラリアは低価格帯の赤身率が高い加工用牛肉(主にミンチ向け)を主に輸出していることから、競合する可能性は低いとされている。
(渡部卓人)
(オーストラリア、米国)
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