米韓首脳会談、通商合意に変更なし、李大統領は講演で対中経済依存の修正示唆

(米国、韓国)

ニューヨーク発

2025年08月27日

米国のドナルド・トランプ大統領は8月25日、首都ワシントンで韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領と米韓首脳会談を実施した。

米国時間26日午前時点で、首脳会談に関する米国政府の公式発表はなく、協議の詳細は明らかでない。ただし、両首脳は米韓同盟の重要性を確認したほか、米国の関税措置や韓国の対米投資などに関する通商合意、北朝鮮問題などについて協議したもようだ。

両国は7月末、(1)米国が韓国に対する相互関税率を25%から15%に引き下げること、(2)韓国が米国に対し造船や半導体などの分野で3,500億ドルを投資すること、(3)韓国が米国の液化天然ガス(LNG)などエネルギー資源を1,000億ドル購入すること、などで合意に達したと発表した(米国側:2025年8月1日記事参照、韓国側:2025年8月5日記事参照)。ただし、これまでに合意文書や共同声明は発表されておらず、合意内容の詳細は明らかではない。

トランプ氏は8月25日の首脳会談後の会見で、「合意は成立している」「韓国は合意の一部に異議を唱えたが、米国は譲歩しなかった」などと述べ、合意に変更がないと示した(通商専門誌「インサイドUSトレード」8月26日)。

李氏は同日の首脳会談後、シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)で講演外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、「(トランプ氏と)非常に良い会話ができた」「(会談の)結果は非常に良好だ」などと肯定的に振り返った。李氏は、「変化する安全保障情勢に合わせて、2国間同盟をより相互的で未来志向のものに現代化することで合意した」「朝鮮半島の平和構築と非核化達成に向け緊密に連携することで合意した」などと述べ、特に安全保障面での会談の成果を強調した。同時に、日本を不可欠なパートナーだと指摘し、韓米日3カ国連携の強化に意欲を示した(注)。一方で、通商合意に関しては、「合意は両国の先端技術協力を強化する礎になる」と言及するにとどめた。

CSISのジョン・ハムレ所長から、韓国の対中経済関係を問われたのに対し、李氏は、「(米中対立の顕在化までは)韓国は安全保障を米国に、経済協力を中国に依存していたと言える」「しかし、自由民主主義国家と中国主導の国家群の対立や競争が激化し、サプライチェーンの再編が進展する中で、そうしたロジックはもはや成り立たない」と述べた。さらに、「米国の輸出管理やグローバルサプライチェーンに関わる分野においては、韓国は中国と特別な関係を構築することから距離を置いている」とした。また、「地理的近接性や経済的な結びつきから、中国との関係は必要不可欠な範囲で維持している」と補足しつつも、「現時点で米国の基本政策に反する行動や決定を行うことはできない」と続け、戦略分野で中国とのサプライチェーンの分離(デカップリング)を目指す米国の政策に韓国が追随する姿勢を示唆した。

写真 CSISでのイベントの様子。(左)李大統領、(右)ハムレ所長(ジェトロ撮影)

CSISでのイベントの様子。(左)李大統領、(右)ハムレ所長(ジェトロ撮影)

(注)李氏は米韓首脳会談に先立って訪日し、8月23日に日韓首脳会談を実施している(2025年8月25日記事参照)。

(葛西泰介)

(米国、韓国)

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