トランプ米大統領、バイデン前政権の競争促進の大統領令を撤回、規制緩和へ

(米国)

ニューヨーク発

2025年08月15日

米国のドナルド・トランプ大統領は8月13日、ジョー・バイデン前大統領が2021年7月に発令した「米国経済における競争の促進」と題する大統領令(14036号)を撤回外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同大統領令は、大企業による寡占市場や不要な規制で競争が抑制されている市場に対する法令の執行強化や規制の撤廃を目的としていた。バイデン前大統領は特に、支配的なインターネットプラットフォーマーによる合併の厳格な精査や、連邦取引委員会(FTC)によるインターネット市場での不公正慣行に関する規則策定などを求めていた(2021年7月12日記事参照)。

司法省は今回の発表に関して、「米国第一」の反トラスト政策は「規制当局や官僚が結果を強制するのを助けるものではない」「イノベーションと機会に対する障壁を取り除き、自由競争に対する規制負担を軽減する反トラスト法(日本の独占禁止法に相当)の執行を通じて、新たな米国の黄金時代を解き放つ」とする声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。そのほか、薬価の引き下げ(2025年8月6日記事参照)や競争の障害となる規制撤廃、ハート・スコット・ロディノ法(HSR、注1)の審査プロセスの簡素化などに注力すると述べている。

トランプ政権は関税、減税、規制緩和を経済政策の柱に据えている(注2)。関税は相互関税などによる追加関税(2025年8月1日記事参照)、減税は「大きく美しい1つの法案法」(2025年7月4日記事参照)によって実行している。規制緩和は、これまでエネルギー(2025年1月22日記事参照)や人工知能(AI、2025年7月25日記事参照)の分野を中心に進めてきた。今後は規制緩和についても、対象分野を拡大するなど、取り組みを本格化させていくとみられる。

(注1)HSRの基準を満たす取引の当事者は競合範囲の重複などについて、当局に対して事前に届け出書を提出しなければならない。

(注2)スコット・ベッセント財務長官は政権発足100日を機に経済成果をまとめた声明で、「トランプ政権の経済政策の3つの柱『関税、減税、規制緩和』は独立した政策ではない。これらは、経済成長と米国内製造業の活性化を推進するエンジンの相互に連携した要素だ」と述べている(2025年5月1日記事参照)。

(赤平大寿)

(米国)

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