欧州委、新たな国家補助枠組み(CISAF)をクリーン産業ディール第1弾の中核と位置づけ
(EU)
ブリュッセル発
2025年08月08日
欧州委員会は7月2日、クリーン産業ディール政策の進捗を報告する第1弾の政策文書を発表した(プレスリリース
)。2025年2月に発表したクリーン産業ディール(2025年3月4日記事参照)の6つの施策すべてに進捗が見られるとした上で、6月25日に採択したクリーン産業ディール国家補助枠組み(CISAF、2025年6月30日記事参照)については、重要な施策の一部として評価した。2025年末までの暫定的な緩和策である「暫定危機・移行枠組み(TCTF)」の下で、6月までに850億ユーロ以上の国家補助が承認されるなか、CISAFによってルールが簡素化されることなどにより、加盟国のグリーン移行への目標達成がさらに後押しされるとした。
同政策文書では、欧州投資銀行(EIB)による財政支援スキームの進捗も記載された。クリーンエネルギー開発事業者と産業界との間の電力購入契約(PPA)に対し、EIBによる総額5億ユーロ規模の保証(counter guarantee)を提供し、投資リスクを軽減する。また、新たな送電網部品の製造を促進するために総額15億ユーロ規模の保証を行うスキームも開始された。
また、欧州委は7月4日、加盟国がCISAFに基づいて実施する国家補助の設計・認可について、基準を明確にするための政策文書も公表した。同政策文書に記載された企業への主な支援対象や方法は次のとおり(添付資料表参照)。
(1)クリーンエネルギーの生産加速に向けた支援:以下の生産・貯蔵設備などに対する投資を行う企業に対し、税制優遇などを通じ支援を行う。支援対象を従来の再生可能エネルギー(再エネ)だけではなく低炭素エネルギーに拡大したことが特徴。
(a)再エネの生産・貯蔵設備
(b)低炭素燃料の生産・貯蔵設備
(c)非化石エネルギーにより電力システムの柔軟性を提供する設備
(d)産業の脱炭素化に資する設備
(e)クリーン技術の最終製品・特定部品などの製造設備
(2)民間の投資家に対する支援:上記(1)およびエネルギーインフラなどへ投資を行う民間の投資家に対し、支援を行う。具体的には、専用ファンドや特別目的事業体(SPV)に対して株式、融資(劣後融資を含む)、保証のかたちで支援を行う。
また、欧州委は7月2日、課題となっているエネルギー価格を引き下げるための施策として3つのガイダンスを発行した(2025年8月7日記事参照)。
(牛来博哉)
(EU)
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