テンセントが「微信」の知財保護の取り組みを日本企業に紹介

(中国)

知的資産部知的財産課

2025年07月18日

ジェトロが事務局を務める国際知的財産保護フォーラム(IIPPF、注1)は7月2日、中国のテンセント(注2)の微信法務チームによる、微信のブランド保護について解説するセミナーを開催した。ジェトロ本部(東京)を開催地として、IIPPFの参加企業・団体から19人がリアル参加したほか、一般参加者264人がオンライン参加した。

テンセントは、世界で14億のアカウントが存在するメッセージアプリ「微信」や、その海外版のアプリ「WeChat」の運営を行っている。

今回はテンセントの上級法務顧問から、「微信」上での権利侵害行為の取り締まりの状況や、権利者のブランドを保護する「ブランドプロテクションプラットフォーム(BPP)」などの機能について解説した。

微信では、ユーザー同士のチャットやグループ内で模倣品が売買されることがあり、そうした場合、ブランドの権利者は検知できない。そのため、BPPでは、微信のチャットやグループで模倣品の販売業者から連絡を受けた、あるいは実際に模倣品と知らされずに販売され購入した微信ユーザーが、当該情報をブランドの権利者に提供したり、模倣品販売事業者のアカウントを通報したりできる機能を備えている。ブランドの権利者はユーザーから提供された情報や通報されたアカウントのデータを検証のうえ、テンセントに検証結果を提供する。テンセントが、被通報アカウントが権利侵害を行っていると判断した場合、当該アカウントは、違反行為の重さに応じて、アカウントの凍結または削除する。テンセントが2025年5月19日に公表した「2024 Updates & Analysis Weixin Brand Protection ReportPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」によると、2024年には模倣品販売が確認された微信の個人アカウント4万5,000超が削除または凍結対象となった。

また、微信のアカウントやQRコードなどが印刷された名刺を配布して顧客を集める一部の模倣品販売業者への対策として、新たに追加された「模倣品販売カード情報提供」機能についても紹介があった。ユーザーは、同機能で名刺上のアカウント情報をスキャンすることで、模倣品業者の情報と照合できる。模倣品業者として判別された場合、迅速に通報することができる。

このほか、2024年に微信チームが立ち上げた「WeBrandプロジェクト」についても紹介がなされた。同プロジェクトは、微信がブランド権利者や各地の法執行機関に対して模倣品製造業者に関する手掛かりを提供することで、知的財産権侵害の刑事事件の摘発につなげるプロジェクトであり、2024年から29件の刑事事件の摘発および190人以上の模倣品製造業者の逮捕につながったという。

セミナー後には、テンセントとIIPPFの中国プロジェクトチームおよびインターネットプロジェクトチームのメンバーとの意見交換会が実施された。参加した日本企業からは、BPPを利用した効率的な対策の方法やBPPの機能についての具体的な質問が投げかけられるなど、活発な交流が行われた。

写真 セミナー会場の様子(ジェトロ撮影)

セミナー会場の様子(ジェトロ撮影)

(注1)IIPPFは2002年4月に、模倣品・海賊版などの海外での知的財産権侵害問題の解決に意欲を有する企業・団体によって設立され、2025年6月時点で212社・72団体が参加している。IIPPFの地域・分野別の各プロジェクトチームでは、海外の政府機関や海外EC(電子商取引)プラットフォーマーなどとの意見交換会を実施している。

(注2)テンセント・ホールディングスは、広東省深セン市に本拠地を置く中国の多国籍テクノロジー企業で、「微信」などのソーシャルメディア、オンラインゲーム、決済サービスなど、幅広い事業を展開している。

(泉高晟)

(中国)

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