トランプ米大統領、銅の輸入に50%の追加関税を課す意向を表明、232条調査受け
(米国、世界)
ニューヨーク発
2025年07月11日
米国のドナルド・トランプ大統領は7月9日、自身のSNSで、銅の輸入に8月1日以降、50%の追加関税を課す意向を明らかにした。米国商務省産業安全保障局(BIS)は2025年3月に、1962年通商拡大法232条に基づき、銅の輸入が国家安全保障に及ぼす影響を判断するための調査を開始していた(2025年3月14日記事参照)。
232条は、特定製品の輸入が米国の国家安全保障に脅威を及ぼす場合に、追加関税などの輸入制限措置を発動する権限を大統領に認めている。具体的には商務省が調査を担い、調査開始から270日以内に安全保障上の脅威の有無と輸入制限措置の提言をまとめた報告書を大統領に提出する。大統領は報告書を受領後90日以内に、安全保障上の脅威があるか否かを判断し、必要であれば輸入制限措置を発表する。輸入制限措置は、発表から15日以内に実施しなければならない(注1)。
トランプ氏のSNSへの投稿によれば、既に報告書は大統領に提出されている。調査期間は120日程度とみられることから、調査は法律で定められた日数の半分程度で終えたことになる。報告書は公開が義務付けられているが、トランプ政権1期目に商務省は、自動車・同部品の輸入に関する232条調査結果の公開を拒否した。最終的には、同報告書の公開を定める法律が制定された後、バイデン政権下で公開された(2021年7月13日記事参照、注2)。今回の報告書がどのタイミングで公開されるかは、現時点では不透明だ。
なおトランプ氏は、銅は半導体、航空機、船舶、弾薬、データセンター、リチウムイオン電池、レーダーシステム、ミサイル防衛システム、極超音速兵器など重要な産業に不可欠な素材で、米国国防総省で2番目に多く使用される素材だと強調している。
トランプ政権は銅のほかにも、半導体や医薬品など6分野で232条調査を進めている(注3)。トランプ氏は7月8日、医薬品の輸入に対する輸入制限措置を「まもなく発表予定」だとし、「1年から1年半の猶予期間を設け、その後、医薬品を米国に輸入する場合、200%という非常に高い関税が課せられることになる」と述べている(米国通商専門誌「インサイドUSトレード」7月8日)。
(注1)措置を実施するために他国と通商協定を交渉する場合は、180日間の延長が可能。なお、輸入制限措置を実施しないとの判断もあり得る。232条に基づく調査、報告、措置決定などの手続きの詳細は、2024年12月10日付地域・分析レポート参照。
(注2)現在、自動車・同部品に課されている追加関税は、当該報告書を基に課されている(2025年3月27日記事参照)。
(注3)現在進められている232条調査は、2025年6月24日付地域・分析レポート参照。
(赤平大寿)
(米国、世界)
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