米シンクタンク、米国の対中エタン輸出管理強化の影響解説
(米国、中国)
ニューヨーク発
2025年07月01日
米国シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)の経済プログラムディレクター兼国際ビジネスショールチェアのフィリップ・ラック氏は6月24日、中国に対する米国のエタン輸出管理強化の影響を解説する論考を発表した。
米国メディアの報道によると、商務省産業安全保障局(BIS)は2025年5月末以降、米国の石油ガス輸送大手エンタープライズ・プロダクツ・パートナーズとエナジー・トランスファーに対して、石油化学原料のエタンとブタンの中国への輸出に、事前の輸出許可(ライセンス)取得を要求すると通知した。その後、ブタンは輸出管理の対象から除外された(ロイター6月4日)。エタンについては、中国への輸送は許可された一方で、中国での荷下ろしは禁止されており、輸出の完了にはBISの追加承認を必要としているもようだ(ブルームバーグ6月25日)。
米国エネルギー情報局(EIA)によると、2024年の米国のエタン輸出は日量49万バレル、このうち中国への輸出は日量23万バレルで全体の47%を占める。EIAは、最大の仕向け地の中国に対する輸出管理が強化されたことにより、2025年の米国のエタン輸出は日量41万バレルに、2026年には日量31万バレルに減少すると予測している。ラック氏はこれにより、米国のエタン生産者・輸出者に経済的損害が及ぶと指摘したほか、エネルギー市場に政治的リスクを持ち込み、同盟国・パートナー国の信頼を失うことになると警鐘を鳴らした。
なお、商務省は2025年4月に複数の米国半導体大手企業の半導体を輸出管理の対象に追加したほか(2025年4月17日記事参照)、5月に複数の米国半導体電子設計自動化(EDA)ツール大手企業のソフトウエアや航空機部品の中国への輸出ライセンスを停止した(2025年5月30日記事参照)。6月の英国ロンドンでの米中通商協議を通じて、両国は、中国によるレアアース輸出管理の緩和や、米国によるこれら製品の輸出管理緩和の方向性で合意したとみられるが(2025年6月13日記事参照)、合意内容の詳細や、米国による輸出管理緩和の状況は不透明なままとなっている。
(葛西泰介)
(米国、中国)
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