6月の米消費者物価指数、関税引き上げに伴う価格転嫁の影響が表れ始める
(米国)
ニューヨーク発
2025年07月16日
米国労働省が7月15日に発表した2025年6月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.7%上昇(前月2.4%上昇)となった。変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は同2.9%上昇とこちらも前月(2.8%上昇)から加速した(添付資料図1、表参照)。コア指数を年率でみた場合、前月比、3カ月前比、6カ月前比がそれぞれ2.8%上昇(前月1.6%上昇)、2.4%上昇(同1.7%上昇)、2.7%上昇(同2.6%上昇)でいずれの期間でも加速が確認できる。なお、市場予想は、CPIが前月比0.3%上昇、前年同月比2.6%上昇、コア指数が前月比0.3%上昇、前年同月比3.0%上昇だった。
前年同月比でみると、エネルギーは0.8%下落と前月から下落幅が縮小、外食も含めた食料品は3.0%上昇と前月(2.9%上昇)からわずかに上昇幅が拡大した。コア指数では、財部門は0.7%上昇(前月0.3%上昇)と伸びが加速した。サービス部門は3.6%上昇と前月と同程度の伸び率だったが、医療サービスなどの伸びが加速した結果、住居費を除くサービスは3.8%上昇(前月3.5%上昇)と伸びが加速した(添付表、添付資料図2参照)。
瞬間風速を示す前月比でみると、コア指数では財部門は0.2%上昇(前月0.0%上昇)、サービス部門は0.3%上昇(前月0.2%上昇)だった。財部門では、コンピュータ(1.4%上昇)、玩具(1.8%上昇)、家電(1.9%上昇)、衣類(0.4%上昇)など輸入依存度の高いアイテムで上昇が幅広くみられた。ただし、新車(0.3%下落)は低下した。先行きの需要減速懸念(2025年7月11日記事参照)を受けて、日本の自動車メーカーが関税引き上げに伴うコスト上昇分を負担するケースも報告されており(ブルームバーグ7月10日)、こうした動きが影響している可能性もある。
今回の結果は関税引き上げの影響が顕在化しはじめたことを示しており、今後数カ月の間、物価上昇圧力が続く可能性がある。米国連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は、関税引き上げの影響が一時的なものとなるかどうかは長期の期待インフレ率が大きく上昇することなく固定されているかどうか次第、との見解を示していたが(2025年5月8日記事参照)、関税引き上げ懸念の再燃(2025年7月8日記事参照)を受け、このところやや落ち着きを取り戻しつつあった期待インフレ率が再び上昇する可能性もある。ドナルド・トランプ大統領は、今回のCPI発表後に自身のSNSにおいて再び利下げを要求しているほか、FRBの次期議長人事プロセスやFRB本部改修費をめぐる監督責任などを交えながらパウエル議長への圧力を強めているが、インフレをめぐる先行きリスクが高まる中では、早期利下げは極めて困難とみられる。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の調査では、7月の連邦公開市場委員会(FOMC)は政策金利を維持すると市場の大多数が予想している。
(加藤翔一)
(米国)
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