米国の第2四半期新車販売、前年同期比2.2%増と好調も先行き需要減の兆候
(米国)
ニューヨーク発
2025年07月11日
モーターインテリジェンスの発表(7月8日)によると、米国の2025年第2四半期(4~6月)の新車販売台数は、前年同期比2.2%増の421万6,393台となった(添付資料表1参照)。
第2四半期の新車販売を詳しくみると、2025年4月3日に自動車の輸入に対する25%の追加関税が発動されたことなどから、車両価格の上昇などを懸念した消費者による購入前倒しが増加し、4月、5月はそれぞれ販売台数が9.8%増、1.3%増と増加した。一方で、6月はその反動減もあり4.0%減と減少に転じた。自動車調査会社のコックス・オートモーティブのチャーリー・チェスブロー・シニアエコノミストは「すでに需要が満たされた状態にあるため、今後数カ月は消費者の需要が弱まると予想される」との見通しを示した。また、現代ノースアメリカのランディ・パーカー最高経営責任者(CEO)も「下半期は厳しいものになるだろう。多くの逆風が吹いている。金利は依然として非常に高く、政治的な混乱も当然ある」と述べた(ロイター7月1日)。
足元の在庫状況をみると、第2四半期の販売台数に対する在庫台数の比率は、販売の増加を受け前年同期より14.6ポイント低下し、184.1%となった。ただし6月の在庫台数は、販売台数の減少や、「2026年モデルがディーラーに並び始めていること」(コックス・オートモーティブ7月10日)などが影響し、前月比で14.5%増と伸びている。
市場では追加関税による新車販売価格の上昇が予測されているが、いまだその兆候は表れていない。6月時点での1台当たりの平均車両販売価格は4万8,907ドルと、前月比108ドルの増加にとどまった。また、メーカーが提供するインセンティブに関しても、前月とほぼ同水準の1台当たり3,375ドルとなった。
第2四半期の販売台数を部門別にみると、乗用車が前年同期比10.7%減の74万4,414台、小型トラックが5.4%増の347万1,979台となった。小型トラックが全車に占める割合はデータが確認できる1978年以降最高の82.3%となり、大型車を好む傾向がより強まっている。
主要メーカーの販売状況をみると(添付資料表2参照、注1)、ゼネラルモーターズ(GM)はスポーツ用多目的車(SUV)の「エクイノクス」「トラバース」などの販売が押し上げて前年同期比7.3%増の74万2,177台、トヨタはピックアップトラック「タコマ」、前年同期にリコールにより販売が減少した「プリウス」が伸び7.2%増の66万6,469台、フォードはピックアップトラック「Fシリーズ」、SUV「ブロンコ」が伸びて14.4%増の60万9,160台、ホンダはSUV「CR-V」「パスポート」が好調で8.7%増の38万7,574台となった。一方、ステランティスはピックアップトラック「ラム」、乗用車「チャレンジャー」が減少し11.5%減の30万6,459台に減少。現代はSUV「ツーソン」、乗用車「エラントラ」が伸びて10.3%増の25万5,579台、日産は乗用車「セントラ」「アルティマ」が販売の押し下げ要因となり6.5%減の22万1,441台となった。
BEVは減少の一方、HEVが大幅増
バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)を合わせたクリーンビークル(CV)の販売台数は、前年同期比3.3%減の39万3,909台となった(添付資料表3参照,注2)。前年同期比での減少は、2020年第2四半期以降初めてだ。また、全車に占めるシェアは3期連続の減少となった。うち、BEVは5.5%減と減少した。GMが前年同期比2.1倍と大幅に伸びる一方で、テスラが「モデルY」など複数のモデルが落ち込み12.6%減と減少した。
ハイブリッド車(HEV)は前年同期比36.8%増と大幅に増加し、全車に占める割合も3.2ポイント上昇し12.8%に拡大した。トヨタが全体の約56%を占めシェアで首位となり、前年同期比でも36.3%増と大きく伸びた。その他のメーカーでは、ホンダが42.8%増と大幅に増加。起亜も76.9%増と増加した。
(注1)一部のメーカーは月別の販売台数を発表していないため、モーターインテリジェンスによる推定値を含む。
(注2)上半期から第1四半期を除いた推定値。
(大原典子)
(米国)
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