米FRB、政策金利据え置きを決定、先行き不透明感の高まりを強調

(米国)

ニューヨーク発

2025年05月08日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は5月6~7日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利のフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を大方の市場予想どおり4.25~4.50%で据え置くことを決定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(添付資料図参照)。政策金利の据え置きは3会合連続、決定は全会一致だった。

今回発表された声明文の前回からの変更点は、(1)全体の景気判断に関し、2025年第1四半期(1~3月)GDPの結果(2025年5月1日記事参照)を受けて「純輸出の変動がデータに影響を与えている」と言及、(2)先行きの不透明さが「さらに」増していると言及、(3)「失業率とインフレ率の上昇リスクが高まっていると判断している」と言及、の3点。

FOMC後の会見でジェローム・パウエル議長は、トランプ政権の進める関税政策などはまだ途上にあり、経済への最終的な影響は依然不明としつつ、「発表された大幅な関税引き上げが持続すれば、インフレ率の上昇、経済成長の鈍化、失業率の上昇を招く可能性が高い」と述べて警戒感を示した。その上で、インフレの影響が持続的なものになることを避けるべく、長期的なインフレ期待をしっかりと安定させることの重要性を強調した。

今後の利下げ時期については、「当面は、政策スタンスの調整を検討する前に、(政権の政策の影響が)より明瞭になるのを待つのが得策だ」として、引き続き利下げを急がない姿勢を示した。また、物価安定と雇用の最大化というデュアル・マンデート(2つの使命)が対立するシナリオに直面する可能性があり、そのような場合には、それぞれの指標が「FRBの目標からどの程度離れているのか、また、目標との乖離が縮まると予想される時間軸は(FRBの見込みと)どの程度異なる可能性があるのかを検討する」必要があると指摘し、データを慎重に見極めたい考えを示した。労働市場の悪化懸念から積極的な利下げを行った2024年9月のFOMC(2024年9月19日記事参照)を念頭に置いた質疑では、現時点で労働市場が当時と同様の状態にあることは否定しつつ、「労働市場の著しい悪化を確認すれば、支援できるよう検討する」とも述べ、FRBはデータ次第でさまざまな可能性を検討していくことになりそうだ。

(加藤翔一)

(米国)

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